65年前の公園計画が突然再浮上 練馬の住宅街が騒動に「いまさら立ち退きなんて無理」 

2022年3月19日 19時56分
 東京都練馬区の北西部で65年前に構想されたまま休眠状態となっていた区の公園整備計画が再び動きだし「なぜ今ごろ」と、住民が困惑している。区は、絶滅危惧種のカタクリの自生地を含む23区では貴重な緑地の保護が必要だと説明するが、宅地化の進んだエリアは既に約1000人が暮らす住宅街となっている。計画に反対する署名運動も活発に行われ、合意形成は難航必至とみられる

◆宅地開発進み現在は住宅が林立

 問題となっているのは、区内の大泉地区を流れる白子川流域の自然環境の保全を図る「稲荷山公園」の整備計画。1957年、川沿いの良好な樹林地の保全を目的として8ヘクタールを整備することが都市計画決定された。
 その後、78年に隣接の樹林地が計画地に編入され、総面積は10ヘクタールとなった。79年に「稲荷山憩いの森」(2.2ヘクタール)、2017年に「清水山の森」(1ヘクタール)が同公園の一部として部分開園している。だが、それ以外の部分については、宅地開発が進展。都市計画決定されたばかりの頃は見渡す限りに広がっていた農地や林は、住宅が林立するようになった。
 区道路公園課によると、計画地にはカタクリの群生地が残り、オオタカなど希少種も生息し、現在のままでは自然の保存は困難な状況にあるという。「乱開発を防ぐ」として棚上げしていた公園の整備方針を区が改めて示したのは19年。「区みどりの総合計画」に「みどりの拠点」として整備する方針を盛り込んだ。
 これを受けて昨年2月、「稲荷山公園基本計画」の素案を公表。「川や屋敷林が点在する『武蔵野の面影』を感じられる公園として整備する」とした。これに住民たちが驚いた。

白子川に沿って住宅がびっしりと立ち並ぶ稲荷山公園の計画予定地周辺=東京都練馬区で、本社ヘリ「おおづる」から

◆今いる人に納得できる説明を

 「65年前の計画で住民を追い出すのか…。納得できない」。自分で設計した住宅で、40年以上前から暮らしてきたという男性(73)は憤る。「財産権と生活権に関わる問題だ」。子どもの頃からの住民だという女性(42)も「今いる人をどかして森をつくる理由が分からない。納得できる説明をしてほしい」と嘆く。
 区の住民説明会は、昨年3月から9月にかけ7回開催された。しかし参加者は延べ約190人にとどまり、多くの住民の納得は得られていない。2月、住宅街を公園の計画地から外すように求める陳情書が、エリア住民の4分の1に当たる245人の署名と共に区議会に提出された。整備反対派は、この問題を話し合うために住民を交えた協議会の設置を区に求めている。
 別の住民らで結成した「清水山のカタクリを守る会」も2月下旬、事業の規模縮小を求める嘆願書を755人の署名と共に区に提出。「財政が逼迫ひっぱくする中、膨大な費用をかけて住宅400戸を取り壊し原野に戻す暴挙を犯してまでも公園は必要なのか」と計画に疑問を投げ掛けた。
 区は新年度予算に実施計画の策定費1525万円を計上、詳細な計画内容や事業スケジュールを検討するとしている。区道路公園課の担当者は「計画が実現すれば、区では初めての大規模な立ち退きになる」と認めた上で「丁寧な説明を続けたい」としている。(砂上麻子)

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