「男子が先」の刷り込みに配慮を 男女混合出席簿の導入進む 首都圏の小学校は9割超え 中学は25%が「男女別」

2022年3月20日 06時00分
 ジェンダー平等の観点から、公立小中学校で男女混合出席簿の導入が進んでいる。島しょ部を除く東京都内の区市町村と首都圏6県の政令・中核市計68自治体に尋ねたところ、小学校は93.2%が導入していた。一方、中学校は74.7%にとどまる。専門家は「男女別出席簿は『性別で分けられる』という意識の刷り込みにつながる。繰り返し、『男子が先』に呼ばれる影響は大きい」と改善を求める。(奥野斐)
 男女混合出席簿は、出席番号で男子の後に女子が続くのは男女平等にそぐわないなどとして、1980年代から導入され始めたとされる。本紙は1月から、68自治体の教育委員会に現状を尋ね、「新型コロナで業務が逼迫ひっぱくしている」という東京都福生市を除き回答を得た。
 都内では、小学校の導入は9割超。中学校は導入ゼロが16自治体で、そのうち13自治体を多摩地区が占めており、武蔵村山市は「保健関係の個人情報が男女別で、混合名簿も作ると教員の負担が増す」と答えた。また、4月から全校で混合出席簿にする自治体が9区市町あった。
 政令・中核市では、横浜やさいたまなど12市が小中学校ともに全校で導入。一方、埼玉県川口市と千葉県船橋市は小学校でも10%未満で、「健康診断の際、男女別の方が利用しやすい。2つの名簿があると混乱する」などと説明した。神奈川県のある市教委の担当者が「出席簿を男女で分ける必要はない。その都度、名簿を作ればいい」という考え方とは対照的だ。
 東京学芸大元学長で、日本女性学習財団の村松泰子理事長は「たかが名簿とも言われるが、子どもや教職員の目に触れ、日々使われる出席簿はジェンダー平等教育の土台だ。不必要に男女を分けていないか、問い直す必要がある。子どもへの教育効果を考えるべきだ」と強調した。
 出席簿は学校教育法施行規則第25条で、校長が作成しなければならないと規定。日教組の調査によると、男女混合出席簿の割合は2020年度は87.1%で、1993年度の11.5%から伸びている。

◆中学の導入遅れは保健体育や身体測定が主な理由

 男女混合出席簿への見直しが、中学校では小学校に比べ遅れている。保健体育の授業や身体測定で男女別になることが主な理由だ。だが、2021年度から区立の全中学校が男女混合出席簿に変更した足立区の中学校関係者は「問題はなかった」と振り返る。身体測定など必要に応じ、別の名簿を作成しているという。
 東島根中の生活指導主任、久我佑太教諭(35)は「ことさら性差を意識した指導はしていなかったが、男女別が習慣化していた」と話す。自身の出身校や勤務した学校が男女別出席簿だったこともあり、「出席簿の形が変わることを想定していなかった」という。

2021年度から男女混合出席簿に改めた足立区。東島根中では集会時、性別に関係なく整列する(同校提供)

 出席簿の変更は、区教育委員会が人権尊重の視点から各校に指示した。「一斉にやらないと意識は変わらない」との考えだった。1年近くたち、久我教諭は生徒の変化を感じるようになった。「女子同士、男子同士だけでグループをつくることが減った。必要以上に性別を意識しなくなったのでは」
 東京都は02年の行動計画に、公立小中学校での男女混合出席簿の導入推進を明記。ところが04年、「『男らしさ』や『女らしさ』をすべて否定するような誤った考え方で男女混合出席簿を作ってはならない」という趣旨の通知を出し、その後、行動計画から「推進」を削除した。
 「ジェンダーフリー」へのバッシングが及んだ形だった。都内では今も男女別出席簿を使う中学校が4割ある。

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