「敵基地攻撃」保有検討、議事録作らず 有識者会合、議事概要も公表せず

2022年3月21日 06時00分
 敵基地攻撃能力の保有の是非を最大の焦点に、政府が取り組む外交・防衛政策の長期指針「国家安全保障戦略」改定に向けた議論で、有識者会合の議事録を作成していないことが分かった。要点をまとめた議事概要はあるものの、内部文書扱いで非公表。専守防衛をはじめ、戦後の安全保障政策の大転換につながる検討が透明性を欠いたまま進むことに、専門家は「政府の判断を将来的に検証できるよう記録を残すべきだ」と警鐘を鳴らす。(川田篤志)

◆A4版1枚、最低限の情報

 岸田文雄首相は昨年12月の所信表明演説で、1年間をかけて国家安保戦略と防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の3文書を改定すると表明。これを受け、政府は与党側で進む議論と並行し、今年に入って2013年の国家安保戦略策定に携わった元幹部官僚らの意見聴取を始めた。

 これまでに6回開催し、計21人を招いたが、初回を除いて日程を事前に公表せず、具体的な議論の内容も一切伏せている。毎回、事後に公表しているのは「現在と将来の我が国の戦略的環境等」など議論のテーマや、出席者名など最低限の情報を羅列したA4判1枚の資料にとどまる。

◆「頭の整理」の段階?

 会合を主催する国家安保局の担当者は議事録を作成しない理由に関し「今は検討の初期段階で、多岐にわたる課題について幅広い有識者と意見交換し、われわれ自身の頭を整理しているからだ」と説明。議事概要の存在は認めたが「どこまで開示できるのか精査する必要がある」などとして、公表していない。
 会合に招かれた有識者の1人は取材に、中国や北朝鮮などは議論の推移に注目しており、政府方針がある程度固まった段階で公表した方が戦略的に有利に働くと指摘。「政府側、有識者が本音で議論するために非公開の場があっても良い」と理解を示す。

◆首相演説と相いれず

 現行の国家安保戦略の策定時は、13年9月に設置された有識者会議が7回にわたって会合を開き、安倍晋三首相(当時)ら政府側出席者の発言も記載された議事要旨が公表された。それに比べても、今回は情報公開に後ろ向き。所信表明演説で「国民の理解や後押しのある外交・安全保障ほど強いものはない」と、丁寧な説明を約束した岸田首相の発言とも相いれない。
 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、敵基地攻撃能力の保有によって相手国から反撃されるリスクが高まる可能性もあることから「国民の信頼を得ることが大事だ。有識者が挙げた課題や論点などをできるだけ早い段階で明らかにし、国民的な議論を行うべきだ」と提案する。

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