<新型コロナ>「9月入学」難しい宿題 国際化に利点 教員、保育現場に負担

2020年5月21日 02時00分

9月入学への意見を伝えた(左から)日本保育協会の大谷泰夫理事長、日本PTA全国協議会の佐藤秀行会長=20日、東京都千代田区の自民党本部で

 新型コロナウイルスの影響で学校の休校が長引き、学習の遅れが深刻化していることを受け、九月入学制の導入に賛否が噴出している。秋入学の欧米や中国と足並みをそろえることで留学がスムーズになるなどのメリットもあるが、国民的な合意を得るには時間がかかり「拙速」とする慎重論も目立つ。 (土門哲雄)
 「一時的に保育の需要が急増し、保育士不足が加速する」。東京・永田町の自民党本部で二十日に開かれた「秋季入学制度検討ワーキングチーム」(柴山昌彦座長)の第四回役員会。日本保育協会の大谷泰夫理事長が「現場が対応しきれるか心配している。未就学児童への影響にも配慮してほしい」と意見を伝えた。
 日本PTA全国協議会の佐藤秀行会長も「賛否両論ある。慎重に協議を進めてほしい」と求めた。
 一方で、大学や小学校教員から柴山座長に寄せられたという賛成意見も紹介された。「日本が真のグローバル化を果たすことのできる、大きな可能性を秘めたチャンス」「子どものために楽しい学校生活を戻す」などとしている。

■東大で検討

 九月入学は、安倍晋三首相が四月二十九日、「前広に検討」と話し、萩生田光一文部科学相も「大きな選択肢の一つ」としており、経済界からは期待の声が上がる。政府は六月上旬にも一定の方針を示す考えだ。
 秋季入学は一九八四~八七年、臨時教育審議会(臨教審)で検討された。全十四章、百九十ページ以上の「秋季入学に関する研究調査」(八六年十二月)によると、明治当初、小学校は随意入学だったが、一八八六年、会計年度を四月に改めたことなどで四月入学が奨励されるようになった。洋式教育が導入されて九月入学だった大学も大正期に四月入学に移行した経緯がある。
 「研究調査」は、秋入学への移行の経費を最大約一兆八千億円と試算していた。
 その後も大学審議会などで大学の秋入学が議論されたが、実質的な検討には至らなかった。東大は二〇一二年、秋入学を検討する組織を発足させたが、春の卒業を前提とした公務員試験や資格試験の時期とずれる問題などが解決せずに導入を見送った。

■待機児童

 九月入学を導入した場合、教育や保育の現場は大きな影響を受ける。英オックスフォード大の苅谷剛彦教授らの研究チームは十九日、報告書を発表。来年度の新小学一年生を、一四年四月二日から十七カ月間に生まれた児童とする場合、一部の児童が保育所に五カ月長くいることになり、全国で約二十六万五千人の待機児童が発生すると推計した。
 また、来年九月に入学する新小学一年生は、例年より約四十二万人増えて一・四倍になり、教員が約二万八千人不足。これによって約二千六百億円の支出が必要となり、この学年の義務教育終了までに総額二兆円以上の支出増が見込まれると試算している。

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