「原発15基が危険な状況」「貿易禁止で侵略の津波止めて」 ゼレンスキー大統領が国会演説 日本に対ロ制裁継続求める

2022年3月23日 21時57分
オンライン演説を行うウクライナのゼレンスキー大統領

オンライン演説を行うウクライナのゼレンスキー大統領

 ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、日本の国会でオンライン演説を行い、ロシアの軍事侵攻を非難し、日本に対ロ制裁の継続を要請した。ロシアによるザポロジエ原発への砲撃に言及し、国内の原発が危険な状況にあると危機感を訴えた。海外の要人が日本の国会でオンライン演説するのは初めてで、交戦中の国家元首による国会演説は異例。(井上峻輔)
 ゼレンスキー氏は演説で「アジアで初めてロシアに圧力をかけ始めたのが日本だ。アジアのリーダーになった」と謝意を表明した上で対ロ制裁の継続を要請。「侵略の津波を止めるため、ロシアとの貿易を禁止し、各企業が撤退しなければならない」とさらに厳しい制裁も求めた。
 侵攻を一方的に続けながらウクライナの抵抗に苦しむロシアについて「サリンなどの化学兵器を使った攻撃を準備している」とけん制。1986年に事故を起こしたチェルノブイリ原発の占拠に関しては「核物質の処理場をロシアが戦場に変えた」と非難した。
 攻撃でこれまで1000発以上のミサイルや爆弾で数十の街が破壊され、121人の子どもを含む数千人が殺害されたと指摘。ロシアが停戦に応じない中で「殺された人を葬ることもできない」と惨状を訴えた。
 国連や国際機関の機能不全も指摘し、改革の必要性を強調。日本には停戦後の復興支援も要望した。
 演説は衆院議員会館内の国際会議室と多目的ホールに中継され、岸田文雄首相ら衆参両院議員の7割の515人が出席。ゼレンスキー氏はウクライナ語で約12分演説し、在日ウクライナ大使館側が同時通訳した。

◆「核の脅威」に触れ共感狙う 唯一の被爆国・日本に訴え

 ゼレンスキー大統領は23日の日本の国会でのオンライン演説で、ロシアによる原発攻撃の非道ぶりや核兵器使用の危険性に言及した。唯一の戦争被爆国で、東京電力福島第一原発事故に遭った日本の世論に向け、ロシアによる「核の脅威」を訴えることで共感を得る狙いとみられる。侵攻をやめさせるための対ロ制裁強化や、さらなる支援も求めた。
 「現役の原発4カ所15基が全て非常に危険な状況にある」「核兵器が使用された場合はどうなるか。将来への確信は誰にもない」。ゼレンスキー氏は演説で画面越しに切々と衆参両議員らに訴えかけた。
 東日本大震災による福島の原発事故や、広島・長崎への原爆投下に直接的には触れなかった。それでも、ロシアの攻撃で核の危険にさらされているウクライナの状況と日本が経験した惨状を重ね合わせ、連想させるかのような内容だった。
 ウクライナで史上初めて稼働中の原発が武力攻撃に遭ったことを受け、日本でも武力攻撃を想定していない原発の安全対策の問題が浮上。攻撃を受ければ放射性物質の環境への放出は避けられず、不安を抱く国民にとって、ウクライナでの出来事は人ごとではない。
 ゼレンスキー氏は各国での国会演説でも、その国の歴史的背景に言及してきた。16日の米連邦議会での演説では、日本による真珠湾攻撃や米中枢同時テロに触れ、自由と民主主義を守る世界のリーダーとなるように求めた。英下院での演説では、第2次世界大戦時にナチス・ドイツと戦う覚悟を示したチャーチル英首相の演説を引用した。
 日本に対しては、アジアのリーダーとして対ロ包囲網を強める役割も求めた。ロシアへの配慮から経済制裁に慎重な中国やインドの存在を念頭に、日本の制裁に謝意を示しつつ、さらなる外交努力への期待感をにじませた。

◆首相、ロシアへの制裁強化を表明 ウクライナへの追加人道支援も

 岸田文雄首相は23日、ウクライナのゼレンスキー大統領による国会でのオンライン演説を受けて「ロシアへのさらなる制裁、(ウクライナへの)追加の人道支援も考えていきたい」と表明した。公邸で記者団の質問に答えた。
 首相は、ロシアのウクライナ侵攻について「学校や病院など見境のない攻撃が行われ、罪のない多くの市民が尊い命を失っている」と非難。制裁強化は「ロシアから前向きな行動を引き出すためにも重要だ」と指摘した。ウクライナに対しては、既に1億ドルの人道支援を行うと明らかにしているが、「困難に直面する方々を、国際社会全体でしっかり支えていかなければならないという思いを新たにした」と述べた。
 その上で、24日にベルギーのブリュッセルで開かれ、自身も出席する先進7カ国(G7)首脳会合を「国際社会の連帯を発信する機会にしたい」と強調した。(生島章弘)

おすすめ情報

ウクライナ危機の新着

記事一覧