青春は山折り谷折り 開成学園折り紙研究部

2022年3月24日 07時05分

複雑な折り紙を折る開成学園中学・高校折り紙研究部の生徒たち=いずれも荒川区で

 1枚の紙に生命を吹き込む折り紙に、中高生が部活動で取り組んでいる。「コンプレックス系」と呼ばれる非常に複雑な作品ばかり。動物に昆虫、ドラゴンや天使…。指先から生み出されるミクロコスモス(小宇宙)をのぞいた。
 全国に数少ない「折り紙研究部」。開成学園(荒川区)に中学・高校合同の部があると聞いて訪ねると、中学3年村井景梧(けいご)さん(15)が自信作を見せてくれた。
 「龍神3.5」。折り紙作家神谷哲史(さとし)さんの創作で、「世界で最も複雑な作品の一つ」とされる。

村井景梧さんが折った「龍神3.5」

 「夏休み毎日2時間かけて再現しました」。村井さんが笑顔で語る。
 鱗(うろこ)がすごい。紙を192等分して段々に折った成果で、リアルそのもの。はさみやナイフで切れ目を入れることなく、1枚の正方形の紙をただ折っただけとは信じ難い。
 その上、龍神3.5には完成までの各工程を示す図面が存在しないと聞いて、驚愕(きょうがく)した。普通は「まずこう折る」「次にこう折る」と、折り方が順を追って図面で示される。
 しかし、複雑な作品では工程が膨大なため、個々の図面がないことが多い。手掛かりは、1枚の展開図だけ。展開図とは、完成作品を広げて紙に戻した時にできる、無数の折り線を示した図面だ。
 「折り紙の設計図のようなもので、そこから折り方を考えていきます」と村井さん。大変な粘り強さ、精密さに脱帽する。
 開成の折り研部員は約25人。多くに共通するのは、幼い頃に母親らに導かれて折り紙を始めたこと。入学前に文化祭を見学し、折り研の高度な作品にあこがれたことだ。
 高校1年加茂雄斗(かもゆうと)さん(16)は「入学したら絶対、折り研に入ろうと思った。折り紙について友達と語ったり、紙を一緒に買いに行くのが楽しい。僕は運動があまり得意じゃないけど、折り紙がすごいと認めてもらえるのがうれしいです」。

二又祐介さんが折った「ヘラクレスオオカブト」(左)と加茂雄斗さんが折った「カブトムシ」。神谷哲史さん創作

 この開成が中心となり、日本中高生折り紙連盟が2018年に発足した。加盟は約30校と少ないが、プロ作品の再現だけでなく、自分で一から考案する創作に取り組む生徒もいる。
 創作には、一段と高度な技術やセンスが必要なのは言うまでもない。素人には難解な「円分子法」「領域付加」などの理論を踏まえ、アイデアを2次元から3次元へと飛翔(ひしょう)させる。究極の知的な遊びだ。
 その創作作品を対象にした連盟のコンテストが、2年前の春に行われた。投票で2位に選ばれたのが、開成高校3年大澤一輝(いつき)さん(18)の「落下」。翼を広げた天使のあどけない雰囲気に、胸がキュンとした人が多かったのではないか。

大澤一輝さんの創作作品「落下」

「落下」の展開図。赤線は山折り、青線は谷折り=大澤さん提供

 「中高6年間で最高の作品です」と大澤さん。いつもかばんに折り紙をしのばせ、電車の中などで試し折りをしながら創作のアイデアを練るという。
 「紙があれば、どこでもできる。折り紙は僕にとって、一番手軽な自己表現の手段です」

大澤さんの創作「令和」

 連盟の展覧会が4月1〜3日、東京芸術劇場(豊島区)のアトリエウエストである。入場無料。青春の情熱を捧(ささ)げた、みずみずしい作品に出合ってみては−。
 文・臼井康兆/写真・隈崎稔樹
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