<寄席演芸の人びと 渡辺寧久>継承へ手厚い環境 太神楽の後継者養成 日本芸術文化振興会

2022年3月25日 07時27分

見学会で「五階茶碗」を披露する鏡味小時(左)と見守る鏡味正二郎

 開いた和傘の上で枡(ます)や湯飲み茶わんなどを回したりする曲芸の太神楽(だいかぐら)。寄席に欠かせないその演者を三年間で育て上げているのが、独立行政法人日本芸術文化振興会である。後継者不足解消を目指し、一九九五年に始まった養成システム。これまで翁家(おきなや)和助、翁家小花、鏡味(かがみ)味千代、春本(はるもと)小助、鏡味小時らが巣立った。
 この春、三人の女性が第八期生として芸の習得へと踏み出す。
 「一人を養成するために多額の費用がかかります。それくらいかけても存続させていかなければいけない芸能だと考え、やっている事業です」と担当者は意義を強調する。寄席を支えるための手厚い税金活用だ。
 研修は原則月曜から金曜の午前十時から午後六時までびっしり。その内容は多岐にわたる。
 茶わんを積み上げる「五階茶碗」などの「立てもの」と撥(ばち)などを使った「投げもの」をメインに、長唄、日本舞踊、獅子舞、囃子(はやし)、作法、体操など一回八十分の研修が約千六百回。公演見学や発表会、楽屋実習なども約百四十回加わる。

和傘や撥など太神楽に使う道具

 開校式は四月中旬。八カ月後の適性審査で不合格になることもあるが、「覚えることに意欲的な人、研修をどん欲に受け止めて反復けいこをする人は残りますね」(担当者)。
 宿舎も準備されている。アルバイトをせずにけいこに没頭できるよう奨励費も貸与され、「生活はしていけると思います」(担当者)という充実ぶり。研修修了後には、太神楽曲芸協会に所属し寄席に出演できるなど、芸道への援助がしっかり張り巡らされている。暮らしの心配をしないで芸に一点集中できる、理想的な修業の場だ。
 一九九八年に第一期研修を修了した鏡味正二郎(落語芸術協会所属)は「けいこ場の設備が整っていたこと、同期(翁家和助)がいたので一緒に成長できたこと」と利点を振り返る。四月から教える側として継承にひと役買うが、「不安もありますが、自分が教わったことを伝えるだけです」と気負いはない。
 三年後の二〇二五年三月、太神楽の継承者が芸のスタート地点に立つ。 (演芸評論家)

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