幸四郎、一本気な侠客に 四月大歌舞伎で「荒川の佐吉」 東京・歌舞伎座

2022年3月25日 07時28分

「荒川の佐吉」で佐吉を演じる松本幸四郎(当時市川染五郎)=2012年3月撮影、新橋演舞場で ©松竹

 東京・歌舞伎座「四月大歌舞伎」の第二部は、新歌舞伎の人情物語「江戸絵両国八景 荒川の佐吉」。一本気な侠客(きょうかく)の主人公、佐吉を演じる松本幸四郎(49)は「状況や時の流れに逆らわず、誰よりも人らしく生きている強い男。佐吉になりきりたい」と意気込む。 (谷岡聖史)
 腕利きの大工から、憧れだったやくざに転身した佐吉。しかし、親分は浪人に襲われて縄張りを奪われ、盲目の孫、卯之吉を佐吉に預ける。佐吉は卯之吉をわが子のように育てながら、やがて親分の敵討ちに臨む…。小説家でもあった真山青果による世話物の人気作だ。
 佐吉役は、自身は十年ぶり二度目だが、片岡仁左衛門(78)が八度もつとめている当たり役だ。そのうち二度は、佐吉を助ける友人の大工辰五郎役で自身も共演している。「記憶は強烈に残っています。毎日泣いた芝居はなかったので」
 終盤、佐吉は卯之吉と別れることを決める。その場面を舞台袖から見て、「愛情をささげて育てた子どもと、自分が置かれた立場の間で、(佐吉が)悩み抜いて出した結論」が胸に迫ったと明かす。

「荒川の佐吉」への思いを語る松本幸四郎=東京・歌舞伎座で

 佐吉に関しては、仁左衛門から「どんどん変化していくことが大事」と教わった。序盤と最後に花道から引っ込む場面があるが、二つの場面の間でさまざまな困難を乗り越えながら成長する。
 「同じ役でも花道の姿がこれだけ変わる、ということを明確に出さないといけない。そのために一つ一つの出来事を、実人生を送っているような気持ちで演じたい」
 前回つとめた二〇一二年の時とは異なり、コロナ禍による上演時間の制約がある中で演じることになる。芝居に手を入れることができる時だとして、「凝縮した『荒川の佐吉』を目指したい」と前向きに捉える。
 佐吉を取り巻く布陣は豪華だ。佐吉を見守る大親分の相模屋政五郎を松本白鸚(79)が、宿敵の成川郷右衛門を中村梅玉(75)がつとめる。「本当に幸せな配役」と喜ぶ。
 半世紀以上も続けたミュージカル「ラ・マンチャの男」のファイナル公演が二月に行われたばかりの父・白鸚。「僕は『ファイナルが始まった』のだと思っている。まだ三十年ぐらいやってほしい」と冗談の中に敬意をにじませた。

◆猿之助、魅惑の天一坊 「森の石松」にも出演

公演「森の石松」の取材会に出席した「猿之助と愉快な仲間たち」のメンバー。後列左端が猿之助=東京都中央区で

 四月大歌舞伎の第一部「天一坊(てんいちぼう)大岡政談」で、悪の魅力にあふれる天一坊を演じるのが市川猿之助(46)。午後には、自身が主宰する「猿之助と愉快な仲間たち」の公演「森の石松」にも出演する。
 「天一坊−」は江戸中期の実際の事件が題材。将軍徳川吉宗の子だと自称する謎の僧、天一坊と参謀の山内伊賀亮(やまのうちいがのすけ)(片岡愛之助)のたくらみに、大岡越前守(えちぜんのかみ)(尾上松緑)が立ち向かう。「顔合わせの妙で、(愛之助と松緑は)同年代だが共演が意外と少ない。役者同士のぶつかり合いを見てほしい」と呼び掛けた。
 一方の「愉快な仲間たち」は、猿之助がスーパー歌舞伎で親交を深めた現代劇の俳優らとの演劇プロジェクト。「コロナ禍だが、役者を何とか舞台に立たせなければ」と立ち上げ、二月に朗読劇を上演した。
 今作「森の石松」は、歌舞伎座で上演中の「新・三国志 関羽篇(へん)」も手掛ける横内謙介の脚本で、自身は演出を務める。不思議な声に導かれた男が野球場を造る米映画「フィールド・オブ・ドリームス」にヒントを得た、演劇への思いを描く作品で、劇中劇が時代劇「森の石松」だという。
 猿之助は「石橋正次さんが(自身のヒット曲)『夜明けの停車場』を歌い、私が大衆演劇の座長役で踊るのが見せ場。あっと驚く人を日替わりゲストに呼びます」とPR。ほかに市瀬秀和、石橋正高、下川真矢、穴井豪、松原海児が出演。
 「森の石松」は四月十三〜二十一日、東京・六本木トリコロールシアターで。八千円。問い合わせは電子メール=info@yukaina-en.com=へ。 (谷岡聖史)
<四月大歌舞伎>
 ◇第一部(午前十一時開演)「天一坊大岡政談」(尾上松緑(しょうろく)、片岡愛之助、市川猿之助ら)
 ◇第二部(午後二時四十分開演)「江戸絵両国八景 荒川の佐吉」(松本幸四郎、中村梅玉ら)、「義経千本桜 所作事 時鳥花有里(ほととぎすはなあるさと)」(梅玉、中村鴈治郎(がんじろう)ら)
 ◇第三部(午後六時二十分開演)「ぢいさんばあさん」(片岡仁左衛門、坂東玉三郎、中村歌六ら)、「お祭り」(玉三郎ら)
 公演は四月二〜二十七日(十一、十九日は休演)。チケットホン松竹=(電)0570・000489。

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