冬の寒さで死亡増加、関東にリスク 栃木は北海道の2倍超 住宅断熱の遅れ要因と専門家

2022年3月26日 02時00分
 冬場の寒さが命に及ぼす危険は、北海道や東北地方より関東地方の方が高いとみられることが、10年間の厚生労働省の人口動態統計を本紙で独自集計した結果、分かった。2011年4月からの10年間で冬季(12〜3月)の死亡増加率が全国で最も大きいのは栃木県の21.5%。北海道の2倍を超えた。専門家は、住宅の断熱化が北国に比べて進んでいないことが要因と指摘する。(福岡範行、早川由紀美)

 冬季死亡増加率は、冬季の死者数の平均値を他の時期の平均と比べて算出した。茨城(3位)、埼玉(8位)、千葉(10位)もワースト10に入っている。東京や神奈川も、福島を除く東北5県や北海道より増加率が大きかった。

◆増加の理由に心疾患など多く

 14年の冬季死亡増加率を調査した慶応大の伊香賀俊治教授(持続可能性工学)によると、増加要因の6割を心疾患、脳血管疾患、呼吸器系疾患が占めた。「家が寒いことで起こるだろう三大疾患だといわれている」と指摘する。代表的なのは、入浴時など急激な温度変化がもたらす「ヒートショック」だ。
 伊香賀教授が、今回の本紙の集計を分析したところ、冬季死亡増加率が小さい地域ほど、断熱住宅普及率が高い傾向も明らかになった。普及率は03年から18年の総務省の住宅・土地統計調査から断熱性能の高い複層ガラスなどの窓の導入状況を基に算出。北海道は平均8割を超え、関東を含む多くの都府県は3割未満にとどまる。
 死亡増加率が全国最大の栃木県健康増進課の担当者は「以前から脳卒中を県の課題と位置付けてきた。栃木は朝の冷え込みが厳しい割に北海道や東北に比べると住環境の対策を取っていない」と分析する。近年はチラシなどで内窓や断熱材の追加を促している。

◆気候変動対策にもなるが…

 住宅の高断熱化を進めることは冷暖房の効率を高め、二酸化炭素(CO2)の排出抑制にもつながる。国連のSDGsの「目標3 すべての人に健康と福祉を」「目標13 気候変動に具体的な対策を」を同時に実現していく方策にもなる。政府は、新築住宅に省エネ基準への適合を義務付ける法改正の方針を固めているが、今国会への提出は見送られている。

建築物省エネ法 建築物の省エネ化を目指し、2015年に公布。一部の建築物の省エネ基準適合義務や、販売や賃貸時に事業者が省エネ性能を示す努力義務が定められている。21年には温室効果ガス排出実質ゼロに向けた政府の議論で、25年度の住宅の基準適合義務化や性能表示制度の強化の方針が固まったが、法改正案の国会提出は審議日程の都合で留保。対策の先送りが心配されている。

SDGs(持続可能な開発目標) 気候変動や社会の格差が深刻さを増す中、2015年の国連総会で採択された世界共通の目標。「誰ひとり取り残さない」を基本理念に、30年までに経済、社会、環境のいずれも持続可能な形に変革していくことを目指す。貧困や飢餓をなくすことやジェンダー平等、気候変動対策など17の目標と、それを具体化した169のターゲットがある。



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