<新型コロナ>「非正規の雇用も守って」 出社も在宅勤務もできず 雇い止め

2020年5月17日 02時00分

3月末で派遣切りされた男性の自宅へ、今月1日になって離職票とともに届いた書面

 コロナ禍の収束が見えない中、派遣社員が窮地に陥っている。リーマン・ショック後の非正規切りの嵐は不安定雇用の増大が招く惨状を可視化したが、今回も繰り返されるのか。仕事を失った派遣社員二人が取材に応じ、雇用政策や給付金の貧弱さを訴える中、全く同じ言葉を発した。「何のための税金なのか」と。 (宇佐見昭彦)
 東京都江戸川区の三十代男性の派遣社員は、企業の電話応対を代行する都内のコールセンターで働いていた。感染から命を守るため三月の中・下旬を休んだところ、三月末で失職した。
 狭い場所に大人数が密集して座る職場。「マスクなしでせき込む人もいて換気も悪い。本当に危ないと思った」。上司に「コロナが落ち着くまで身を守ることを優先したい」と申し出て、了解を得たつもりだった。
 「このままだと契約解除になると三月下旬に言われたが、辞めたいわけじゃない。在宅勤務を希望したが聞き入れてもらえなかった」。出勤見合わせの状態が続いた四月二十日、普段の月の半分ほどの賃金が振り込まれた。派遣元に問い合わせると「三月末で契約終了」と言われ、離職票が五月一日に届いた。
 「政府からの給付は遅いし、十万円が一回では家賃と光熱費を払ったら終わり。コールセンターの仕事もセキュリティーに投資すれば在宅勤務が可能なはず。そういう設備投資への助成金も考えてくれたら」
 派遣社員として編集の仕事をしていた都内在住の女性(50)は、四月七日の緊急事態宣言発令の翌日、当面の出社禁止と六月末での雇い止めを告げられた。派遣先企業のコンプライアンス(法令順守)を理由に「派遣社員は在宅勤務ができないから」と言われた。
 「次の仕事がすぐに見つかるか不安。通勤時の感染リスクを考えると、いざという時に在宅勤務可能な職場を探したい」
 以前に正社員で入った会社は、リーマン・ショックによる経営難で退社。今の仕事は派遣で四カ所目の職場だった。夫婦二人暮らしで、月十八~十九万円の自分の収入で家計の四割を賄っていた。「これで老後のために二千万円の備えが必要と言われても…」
 安倍晋三首相は「経済において一番大切な使命は雇用を守ること」と繰り返す。「それなら正規、非正規を問わず雇用継続の努力をしてほしい。企業も派遣社員を在宅勤務の対象外とせず、健康を守ってほしい」

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