<代替わり考 皇位の安定継承>(1) 存亡の危機 長子優先に転換を

2020年5月17日 02時00分

◆静岡福祉大名誉教授(日本近現代史)・小田部雄次氏

 皇室は天皇家と四つの宮家で構成するが、皇位継承資格のある未成年皇族は、秋篠宮家の長男悠仁(ひさひと)さまのみだ。いまの皇室典範のままだと、将来は安定的な皇位継承が危ぶまれ、天皇家と三つの宮家は後継者不在で絶家となる。解決策の検討が急がれる中、秋篠宮さまが皇位継承順位一位の皇嗣(こうし)となったことを宣言する「立皇嗣(りっこうし)の礼」を四月十九日に行った後、政府は本格的な議論を始める予定だったが、新型コロナウイルスの影響で儀式は延期されたままだ。皇室制度と議論のあり方を巡り、皇室の歴史や法制度に詳しい識者の意見を聞き、随時紹介する。
 皇室に秋篠宮さまの長男の悠仁親王以降の皇位継承者が得られるかどうかという危機感が議論の出発点だった。まず皇室の存亡がかかっているという状況認識が必要だ。解決策としては天皇陛下の直系の子どもが男子に限らず皇位継承の優先順位を持つことが、安定した皇位継承につながると考える。
 現在でいえば、愛子内親王を皇位継承順位一位とする。将来、結婚した場合は、その子どもに男女を問わず出生順に二位、三位と皇位継承資格を持たせる。それまでは秋篠宮さまが継承順位二位となり、長女の眞子内親王が三位、次女の佳子内親王が四位、悠仁親王が五位という順序で続く。
 内親王の伴侶の決定にあたっては、現在の男性皇族の結婚相手の決定と同じく、皇室会議の議を経ることとすれば、皇位継承資格を持つ皇族の数を安定させ、悠仁親王の妃(きさき)に男子出産という難題を背負わせる必要がなくなる。
 保守派は、旧宮家の血筋の男系男子に皇籍を取得させるよう主張するが、絶家していない旧宮家と天皇家との男系の共通先祖は六百年前まで遡(さかのぼ)る上、戦後七十年にわたり一般民間人として生活してきた方々だ。その皇室入りに国民の理解は到底得られないし、将来その方々に男子が生まれるという保証もない。
 皇位の安定的な継承策を検討するうえで、愛子内親王を継承順位一位とするのが良い道ではないかという意見が多くなっている。にもかかわらず、政府が本格的な議論を始める前に秋篠宮さまの立皇嗣の礼を行ってしまうのは、男系継承を既成事実化して、議論の前提を狭めることになりかねず、公平さを欠く。
 しかも立皇嗣の礼は過去に前例のない初めての儀式だ。昭和天皇に男子が誕生する前に弟の秩父宮を皇嗣としたことはあったが、立皇嗣の礼に相当する儀式までは行わなかった。
 本来、上皇さまの退位(二〇一九年四月)から天皇陛下の即位の礼(同十月)までの間に解決するべき課題だった。政府の対応は象徴天皇制の崩壊も含めた道を選んでいるかのようで、未来への責任放棄に等しい。 (聞き手・吉原康和)

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