戦争の熱狂と冷静さと

2022年3月26日 07時48分
 ロシアの侵攻を受けて、ウクライナのゼレンスキー大統領が、日本の国会でオンラインで演説しました。
 「アジアで初めてロシアに対する圧力をかけ始めたのが日本だ。制裁の継続をお願いする。ロシアが平和を望むための努力をしよう。ウクライナに対する侵略の津波を止めるために、ロシアとの貿易を禁止しなければいけない」
 国際法に反したロシアの蛮行で自国民が犠牲となり、今なお危機にひんしている国家の代表として、国際社会に対して協力を呼び掛ける姿には胸が打たれます。ロシアの軍事行動を一刻でも早く食い止め、少しでも多くの命を救わねばなりません。
 憲法九条で国際紛争を解決する手段としての戦争や武力による威嚇、武力の行使を放棄した日本は、軍事的協力はできませんが、ロシアに停戦を促すための経済制裁や戦後の復興、民生安定などできる限りの協力はすべきです。
 私たち論説室も二十五日社説で、大統領演説に「日本らしいウクライナ支援で応えたい」と応じました。
 ただ、同日の本紙特報面も報じていたように、演説後、山東昭子参院議長が「貴国の人々が命をも顧みず、祖国のために戦っている姿を拝見して、その勇気に感動しております」と述べたことには、違和感を覚えました。
 侵略をしたロシアが悪いと分かってはいても、国のために市民が命を賭して戦う姿を称賛することは、太平洋戦争当時の「本土決戦」「一億玉砕」のスローガンとどうしても重なってしまうのです。
 年配の読者の方からも「私たちが子どものときの状況と同じで心が痛みます。人ごとと思えません。私も夫も中学校教員でした。教え子たちや子、孫が平和に生きられる世界を強く望みます」との意見が届きました。
 ウクライナ国民と連帯することに全く異論はありませんが、それ一色に染まり、疑問や異なる意見を言い出しづらくならないようにはしたい。多様な意見の存在こそが、ロシアと対極にある民主主義、自由主義の価値だからです。
 戦争は人々を熱狂させ、為政者はそれを利用しようとします。それが歴史の教訓でしょう。だからこそ、どこかに冷静さを持ちながら議論することが、より大切になると思えてならないのです。 (と)

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