「国へ帰れ」北米でロシア系の芸術公演中止や店への嫌がらせ相次ぐ ヘイトクライムとして警察捜査も

2022年3月26日 20時17分
米ニューヨークで今月18日、店先にウクライナ国旗を掲げ同国への支援を訴える飲食店「ロシアン・サモワール」=杉藤貴浩撮影

米ニューヨークで今月18日、店先にウクライナ国旗を掲げ同国への支援を訴える飲食店「ロシアン・サモワール」=杉藤貴浩撮影

 【ニューヨーク=杉藤貴浩】ウクライナに侵攻したロシア系住民が多い米国やカナダで「反ロシア」の動きが広がっている。同国出身者が関わる芸術公演の中止のほか、同国にちなむ商店への嫌がらせも続発。行きすぎた反応に「戦争と市民は関係ない」などと懸念の声が上がっている。
 「私はもう(カナダ)モントリオールに到着しているが政治的理由のためにコンサートを開くことができなくなった」。ロシアの新進ピアニスト、アレクサンダー・マロフェーエフさんは今月上旬、自身のフェイスブックで公演が突然中止になったと公表した。
 決定は共演するモントリオールの楽団が「ロシアの侵略によるウクライナ民間人への深刻な影響を考慮した」のが理由。マロフェーエフさんはすでに「いかなる問題も戦争では解決できない」と母国への事実上の批判を表明していただけに、カナダメディアは「中止はロシア系の人々への憎悪をあおるだけだ」とする有識者の懸念を伝えた。
 米国でもニューヨークのメトロポリタン歌劇場が、ロシア出身でプーチン大統領に近いとされる世界的歌手アンナ・ネトレプコさんを降板させている。
 米メディアによると、ニューヨークの飲食店「ロシアン・サモワール」は侵攻開始以来、売り上げが6割減少。店主夫妻はそれぞれウクライナとロシア出身だが、電話やメールで「国へ帰れ」と嫌がらせが相次いだ。それでもウクライナ支援募金を始め、侵攻への反対姿勢を明確にしている。
 首都ワシントンでもレストラン「ロシアハウス」の窓や玄関が壊される被害があったほか、カナダ・カルガリーのロシア正教教会が赤いスプレーを吹き付けられ、地元警察がヘイトクライム(憎悪犯罪)として捜査を始めた。両国各地では標的にされるのを恐れ、店名などから「ロシア」を外す動きが広がっている。
 米国とカナダのロシア系住民はそれぞれ約250万人、約62万人と旧ソ連圏以外では屈指の規模で、カナダはロシアに次ぐウクライナ系移民も暮らす。反ロシアの動きは実際には交流している双方の住民に影響しており、「これはプーチンの戦争であり、この地で平等を求める人々に関連づけてはならない」(米ニューヨーク市のアダムズ市長)と平静を呼び掛ける声が上がっている。

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