<新型コロナ>路上生活者、給付金もらえず 住民登録 高いハードル

2020年5月16日 02時00分

今回の給付金の盲点について語る「山谷労働者福祉会館活動委員会・山谷争議団」の向井宏一郎さん(中央)とメンバーら=13日、東京都台東区で

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い全国民に十万円を配る特別定額給付金について、ホームレスには住民登録のない人が多く、新たに住民票を作ることができずに給付金の支給対象外になっていることが分かった。自治体も「現行制度で給付は困難」と認め、複数の当事者団体が国などに住民登録がなくても給付するよう求めている。 (天田優里)
 「野宿者の約八割は住民票がない。どこにも居住実態がないから、新たに住民登録することもできない」。東京・山谷地区(台東、荒川区)の野宿者や日雇い労働者などでつくる団体「山谷労働者福祉会館活動委員会・山谷争議団」メンバーの向井宏一郎さん(48)は現状を訴える。
 安倍晋三首相は四月、全国民に給付すると会見で明言したが、住民登録のないホームレスが給付金を受け取るには自立支援センターやネットカフェなどへの住民登録が必要になる。しかしセンターは定員制で面接もあり、希望者全員は入所できない。都内のネットカフェは営業自粛中で、店の管理者に住民登録の許可を得られない上、多くのホームレスは利用料金が払えない。
 普段寝泊まりしている公園や路上は原則住所とは認められず、向井さんは「区役所に緊急的に住民票を置いたり、本人確認できれば給付するなどの制度の変更が必要だ」と、団体として台東区と都に申し入れた。
 感染拡大を防ぐため炊き出しが少なくなる中、ホームレスの間にも不安と不満が広がる。コロナの影響で日雇いの仕事がなくなった男性(62)は「ぎりぎりの生活でつらい。住所がないからホームレスなのに、住民票を出すのは無理」。住民登録がない男性(50)も「ホームレスももらえるもんだと期待したのに」と話す。
 主に渋谷区で支援活動をしている四団体も四月、こうした事態を受け、総務省と区に手続き緩和を訴える要望書を提出。このうち「ねる会議」メンバーで野宿生活を送る小川てつオさん(49)は「野宿者の権利が保障されず、社会からはじかれていることが給付金を通じて浮き彫りになった」と話す。
 住民登録のない人への給付金支給について、都は「区市町村の判断に委ねる」とする一方、台東区は「現行制度ではできない。国に現状を伝える」、渋谷区は「国がはっきりと『自治体の判断で出してもいい』と統一的見解を出さないと給付できない」、新宿区は「何らかの対応をしないといけないが、方法は決まっていない」と困惑する。
 総務省は「支給は住民基本台帳に載っている人が対象。アパートを借りるなど、どこかに住民票を置いてほしい」としている。
 生活困窮者を支援するNPO法人「ほっとプラス」理事の藤田孝典さんは「住民登録のない人の専門窓口を設け、本人確認ができれば速やかに現金給付するべきだ。現状のやり方は、典型的な生活困窮者の社会的排除といえる」と指摘する。

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