<ふくしまの10年・行ける所までとにかく行こう> (19)芝生 もう使えないな

2020年5月16日 02時00分

サッカー場のきれいな芝生は作業員たちの駐車場になった=福島県広野、楢葉両町にまたがるJヴィレッジで(豊田直巳さん提供)

 二〇一一年四月二十日、東京電力福島第一原発からちょうど二十キロ南に位置するサッカー施設「Jヴィレッジ」に着いた写真家の豊田直巳さん(64)は、作業員の様子を撮影して回った。
 東京ドーム十個がすっぽり入る約四十九ヘクタールの敷地に天然芝、人工芝合わせて十面のサッカー場、全天候型の練習場などを備え、「日本サッカーの聖地」とも呼ばれてきた施設。原発事故後は、事故収束で使う資機材を集積し、作業員たちが防護服や全面マスクなどの装備を脱着する中継拠点として使われた。
 管理棟らしき建物に行くと、白い防護服を着た作業員たちが数え切れないほどいた。背中には、識別のためマジックで所属する会社や名字が大きく書かれていた。一階ロビーには、全面マスクに付けるフィルターなどが入った段ボール箱がところ狭しと積み上げられていた。
 当時の福島第一は、原子炉の循環冷却が軌道に乗ったばかりで、高線量のがれきが散乱し、設備は応急のものばかり。そんな原発から二十キロ離れ、少し緊張感から解放されたのか、作業員の表情が意外なほど明るいのが印象的だった。バルコニーのベンチで談笑する姿もあった。
 その半面、サッカーの聖地の原状回復は無理と思った。駐車場では原発との間を往復する車が洗われ、きれいに整備されてきた芝には、作業員たちが乗ってきた自動車が無造作に置かれていた。
 「え、芝生をこんなふうにしちゃうんだ。もう使えないな」。豊田さんがそう感じたJヴィレッジだが、再整備され一八年七月に再始動した。 =おわり
(山川剛史が担当しました。夏ごろ続編を掲載予定です)

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