<ふくしまの10年・行ける所までとにかく行こう> (18)戦車、使っていないのか

2020年5月15日 02時00分

厚い装甲板による放射線対策への期待から、福島第一原発の事故収束作業に戦車まで用意された=福島県広野、楢葉両町にまたがるJヴィレッジで(豊田直巳さん提供)

 東京電力福島第一原発の二十キロ圏が立ち入り禁止となるまであと二日。二〇一一年四月二十日、写真家の豊田直巳さん(64)は、事故収束に当たる人員や資機材の中継拠点として使われていたサッカー施設Jヴィレッジ(広野、楢葉両町)に向かった。
 同施設内の駐車場で見つけたのが二両の戦車ともう一両の車両だった。「あ、これが例の戦車か。原発に投入されるって話だったが、もう使っていないのか」
 写真手前の二両は七四式戦車で、その奥は七八式戦車回収車。
 当時、作業の支障となっていたのが、水素爆発で飛び散った大量のがれきだった。現場の放射線量は高く、がれきには高濃度の放射性物質が付着しているおそれがある。
 そこで政府は、分厚い装甲板で放射線をある程度遮ることができ、車内を与圧し放射能の流入を抑えることができる七四式戦車に目をつけた。車体前面に排土板を付け、ブルドーザーとして、がれき除去に使う予定だった。
 取材日の約一カ月前の三月二十日、戦車などは静岡県の陸上自衛隊駒門駐屯地からJヴィレッジまでトレーラーで運ばれた。視界を確保するため、砲身の先端にミラーを取り付けた。原発への投入に備え、駐車場内でがれき除去訓練もしていた。
 しかし、福島第一1~4号機の建屋周りは狭い。敷地内には、既存の配線や配管のほか、事故後に仮設されたものも多くある。重く大きな戦車を不用意に動かせば、これらを切断してしまう可能性が高いと判断された。出番はないまま、五月三日から駐屯地に順次帰還していった。

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