理不尽な校則を前に「私たちの声を聞いて」高校生ら文科省に意見書 もの言わぬ大人にならないために

2022年3月28日 12時00分

学校へのスマートフォン持ち込みついて話す板橋第五中学校の太田繁伸校長(左)と生徒たち=東京都板橋区の板橋第五中学校で

◆スマホもOK 生徒と校則見直す中学校も

 東京都板橋区の板橋第五中学校は、校則から髪形や服装などの細かい規定を廃止し、生徒が教員と話し合って決める取り組みを進めている。2月には生徒が議論して決めたスマートフォンを持ち込むためのルールを導入。新年度は校則の見直しを議論する予定だ。
 「頭髪の色は生まれつきの色を故意に変えない。脱色、染色、パーマ、奇抜なヘアスタイル、整髪料、ムース類は認めない」「白ソックス(ワンポイント可・ライン不可) ルーズソックスやくるぶしの見えるソックスは不可」ー。
 いかにも細かい校則を改めたのは2020年度。代わりに「学校生活に適しているもの」といった大まかな規定にした。主導した太田繁伸校長(60)は「今は茶髪の生徒もいる」と話す。

◆厳しい校則は「教員のため」

 見直しのきっかけは18年度に生徒から出た要望。当時の校則によれば、男子は寒い時にセーターを着られるものの、学ラン着用も必須。「学ランも着ると暑い。学ランの代わりにセーターを着られるようにしてほしい」との声が上がっていた。
 太田校長は生徒に話し合ってもらい、19年度には校則に提案を取り入れた。その後も生徒や保護者から疑問が出るたび、生徒らにアンケートを取って校則見直しを続けてきた。
 太田校長は「厳しい校則は教員が生徒を指導しやすくするため。多様性の観点から公平ではない。必要最小限でいい」と話す。

◆「自分たち学校のルール決めた」達成感

 スマートフォン持ち込みは、生徒の要望をきっかけに生徒会役員や学級委員14人によるプロジェクトチーム(PT)が昨年12月から今年1月に5回にわたり議論。「保護者らとの連絡のみに使う」「昼休み以外はロッカーに入れる」ーなどの素案を全校生徒や教員、保護者に示し、ほぼ素案通り決定。これまでに3人が持ち込みを申請した。
 PTメンバーで3年の小八重 一颯こばえかずささん(15)は「学校のルールを自分たちで話し合い、決められて達成感があった」と話す。
 太田校長は「生徒が『自分たちで変えられる』という感覚を持ってきたようだ。課題を見つけ、解決の手だてを考えて実践する主体性がないと、社会で生き残れない」と語った。

インタビューに答える日本若者協議会代表理事の室橋祐貴さん=東京都千代田区で

◆室橋祐貴さん「社会は変えられる」

 「学校は子どもにとって社会そのもの。学校を変える経験で『社会は変えられる』という感覚を身に付けられる。それなしに政治参加は進まない」
 若者の意見を政治に反映させる政策提言などを行う一般社団法人「日本若者協議会」代表理事の室橋祐貴さん(33)は、児童生徒が「一人の人間」として尊重され、校則改正など学校運営に関わる「学校内民主主義」の実現を提案する。
 こうした仕組みは、フランスやドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国などで導入され、法制化されていると指摘する。中でもフランスでは、日本の中央教育審議会(中教審)に当たる組織に高校生枠があるという。

◆「大人に言っても意味がない」マイナスの学習体験

 だが日本国内の現状は懸け離れている。校則を決める権限は校長にあり、2020年11月に同協議会が児童生徒らに学校の運営状況を尋ねたアンケートでは「児童生徒が声を上げて学校が変わると思うか」との質問に、回答者779人のうち約7割が「そう思わない」と答えていた。
 室橋さんは「学校を変えようと多くの子どもが声を上げていたが、結局、変わらず、声を上げても無駄だと学んでしまっている。マイナスの学習体験になっている」と話す。自由記述欄には「大人に言っても意味がない」という記述もあった。社会参加意欲の減退につながっているとみる。

◆理不尽なルール、変えるのが当然

 「子どもの時に不合理に耐えることを学び、大人になってから変えればよい」との意見も寄せられるが、室橋さんは「ナンセンス」と切り捨てる。
 「小さい頃から『理不尽なルールは変えるのが当然』と学ばなければ、大人になっても理不尽なルールを変えようとしなくなる。それがジェンダー問題をはじめ、さまざまな社会課題が解決しないまま、たまっている根底にある」と訴える。(加藤益丈)
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