理不尽な校則を前に「私たちの声を聞いて」高校生ら文科省に意見書 もの言わぬ大人にならないために

2022年3月28日 12時00分
 「理不尽な校則や制服制度が多い。私たちの意見を聞いてください」。1月7日、文部科学省の記者会見室。一般社団法人「Voice Up Japan」の高校生メンバーで、1年の日下部くさかべ美雪さん(16)=東京都、沢田初音さん(16)=長野県、3年の奈良岡千夏さん(18)=札幌市=の3人が記者会見に臨んだ。

記者会見する「Voice Up Japan高校生支部」の(左から)奈良岡千夏さん、沢田初音さん、日下部美雪さん=東京・霞が関の文科省で

 学校生活を送るために児童生徒が守るべきだとされる校則だが、「自分たちが過ごす学校のルールを大人が一方的に決めるのではなく、自分たちの意見を反映させたい」。生徒同士、あるいは教員と生徒が活発に意見交換できる場などを求めて声を上げた。
 学校運営にどう児童生徒が関わっていくか。識者は「学校内民主主義」の実現を訴える。目の前の理不尽と思われる事柄に対し「おかしい」と言い、その声が学校の仕組みに反映される経験を積み重ねなければ、将来、社会に出ても、もの言わぬ大人になってしまうとの危機感からだ。
 東京都板橋区の板橋第五中学校では先月、生徒が議論して決めたスマートフォンを持ち込むためのルールを導入。現場の学校では、さまざまな変化が生まれている。

◆理不尽な校則、根拠は「伝統だから」

 「Voice Up Japan」の高校生メンバー、日下部さんは、中学時代にベトナム・ホーチミンのインターナショナルスクールへ通っていた。
 校則らしい校則はなく、自由に過ごした。「ありのままの自分を出せていたように思います」。帰国後、高校に進んだ時、教師から「髪を染めていると、大学の推薦入試に影響する」と繰り返し注意された。「すごく不合理だと疑問を持ちました」
 沢田さんが学んだ中学校は、地域で長い歴史を持つ「伝統校」。前髪が眉毛より下に出てはならず、髪形も編み込みや、いわゆる「お団子」は禁止という校則があった。
 教師に理由を尋ねても、「伝統だから」「中学生らしい生活をするため」といった漠然とした答えが返ってくるだけだった。

◆「当たり前」は本当なのか

 奈良岡さんが通った公立高校は制服がなく、校則の規制も比較的緩いという。ただ、「華美な服装をしない」との規定は気になった。何をもって華美とするのか、誰が判断するのか。「常識を私たちに押し付けていないか」と疑問を抱いた。
 今まで「当たり前」とされてきたことは、本当に当たり前なのだろうか。「校則とは、学校で勉強するために最低限必要なルールのはず。なぜ、こんなことまで縛ろうとするのだろう」
 3人は釈然としない思いを抱えて過ごすうちに、ジェンダー平等の実現を目的に活動する「Voice Up Japan」の存在を、会員制交流サイト(SNS)を通じて知る。昨年5月に「高校生支部」を結成し、活動を始めた。学業との関係などで出入りがあり、現在は全国に散らばる7人が主にオンラインで連絡を取り合う。
 身近な校則や制服は、高校生にとって最も身近な問題の1つ。なるべく幅広い意見を集めようと、昨年6月にインターネットを通じアンケートを実施し、311人から回答を得た。

◆声を上げたら「校則守るのは当然」と批判も

 その内容を意見書としてまとめ、記者会見に先立って文科省に提出。生徒が個性を発揮できるよう、校則について生徒同士や生徒と教員が活発に意見交換できる場を設置し、校則改正のプロセスを明文化するといった提案が柱だった。
 児童生徒の多様な自己表現を圧迫しているとの批判も根強い制服については、生徒の性自認や自己表現を尊重できるよう求めた。
 理解ある大人ばかりではなかった。「校則に生徒が従うのは当たり前」「大学に進んでから、社会に出てからにすればいい」という声も耳に入った。奈良岡さんの高校には、文科省での記者会見後、「社会のルールを守るのは当然だ」などと批判が書かれた手紙が送られてきたという。
 3人ともそうした声には口をそろえて反論した。
 「目の前にある理不尽に声を上げない人間が、大人になってから先も声を上げることができるのか」。校則の改善を求める活動は、民主主義の実践だった。

◆文科省、児童生徒の意見反映する校則に理解

 文科省の担当者は、校則について「作りっぱなしではいけない。子どもの成長につながる内容にする必要がある」と指摘。「自分たちで決めたルールならば守る」と、児童生徒の意見を取り入れた校則の「アップデート」にも理解を示す。だが、学校の現場では、一度決めた校則を変えることへの抵抗感が強いという。
 3人も、同省への働き掛けで一定の手応えは感じたが、すぐに成果へ結び付くとは思っていない。日下部さんは言う。「校則は学校に根付いた、いわば日本の『文化』。でも、前に進まないと変えられない」(小松田健一)
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