「歳時記」の改訂って? 『角川俳句大歳時記』15年ぶり 例句見直し、新季語も

2022年3月28日 11時06分

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 季語の辞典ともいえる「歳時記」。2月に出た『新版 角川俳句大歳時記 春』(角川書店編、5995円)=写真(1)=は、同シリーズとして15年ぶりの改訂という。え? 季語って変わるの? そもそも、歳時記の改訂とはどういうものなのだろう。 (北爪三記)
 全五巻の本書は、十二月にかけて順次、「夏」「秋」「冬」「新年」を刊行予定。春の巻は、立春から立夏の前日までの季語を収める。開くと、時候・天文・地理・生活・行事・動物・植物の七部に分かれ、それぞれに分類された季語とその解説、例句が並ぶほか、近世から使われている季語は成立・変遷に触れた考証も付く。
 「句は、新しいものがどんどん出てくるので、それを例句に載せないと歳時記として古びてしまうということがあるんです。例句の見直しが、改訂の主な目的ということになります」。本書の編集担当・鳥山華子さんが説く。
 今回、旧版の例句を全面的に見直し、この十五年間で刊行された句集や結社誌から秀句を加えた。収録数は全体で五万句以上。試みに冒頭の季語「春」を見ると、近世の「青海や太鼓ゆるまる春の声」(山口素堂)から、近年の「新しき印鑑持たせ送る春」(山岡千秋)まで、六十九の例句が並ぶ。

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 季語の数は全体で約一万八千にのぼり、新たに加えられたものもある。春の巻では、「東日本大震災の日」(東日本大震災忌、三月十一日)=写真(2)。「光り満つ三月十一日の海」(甲斐遊糸)、「三・一一神はゐないかとても小さい」(照井翠(みどり))などが例句に挙げられた。雪国で春先に樹木の周りの雪解けが始まることを指す「木の根明く」(根開き、根明き、雪根開き)も、そう。例句は「木の根明くいづこの木より水こだま」(成田智世子)など。
 作り手として知恵を絞る一つに、配列がある。「季語は五十音順ではなく、季節の進行に合わせて、関係がある仲間を緩く配列しているので。前後を見れば、そのころにどういうことが関連するか見渡せるわけです」と鳥山さん。例えば、「春障子」から順に「春の炉」「春炬燵(ごたつ)」「春暖炉」「春火鉢」「炬燵塞(ふさ)ぐ」「暖炉納む」と続き、暖かくなっていくのに従って暮らしの風景が移っていく様子が浮かぶ。
 現在ではなじみが薄い季語もできるだけ残す方針で、これは文化や暮らしを伝える意義があるとの考えからという。「俳句にとどまらず、生活史に興味がある人にとっても面白いのではないでしょうか」

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