<新型コロナ>困窮者の宿泊所、感染対策に懸念 高齢者多く、相部屋で「3密」も

2020年5月14日 16時00分

手指消毒の徹底や長時間の外出自粛などを呼び掛けている無料・低額宿泊所=東京都台東区清川で

 新型コロナウイルス感染症が広がる中、生活に困窮して住まいを失った人たちが住む「無料・低額宿泊所」での感染リスクが懸念されている。高齢者らが共同生活をしている上、一室に大人数が寝起きするケースもあるためだ。支援団体は「対策の徹底や実態の調査が必要」としている。 (小倉貞俊)
 日雇い労働者が集まる東京・山谷の無料・低額宿泊所。玄関の洗面台には消毒液が置かれ、出入りする利用者は手洗いに余念がない。「うちは全て個室だが、感染者が出ないよう細心の注意を払っています」。ここを含め都内十四カ所で施設を運営するNPO法人・自立支援センターふるさとの会常務理事の滝脇憲さん(47)は表情を引き締める。
 無料・低額宿泊所は社会福祉法に基づく施設で、元路上生活者などが自治体の紹介などで無料か低料金で利用できる。生活保護受給が前提となっている場合が多い。
 滝脇さんは「高齢で持病や精神疾患があり、独り暮らしの人が多い。感染すれば重症化しかねず、食堂や洗面所、通路の手すりなど共用部分もあって、気を抜けない」と話す。
 無料・低額宿泊所は、利用者から生活保護費を搾取する「貧困ビジネス」が一部で指摘されたこともあり、厚生労働省が改善を進めてきた。同省の二〇一八年調査では、全国の宿泊利用者は一万七千人。全五百七十施設のうち、相部屋がある施設は二割に上る。密閉、密集、密接の「三密」の恐れもある。
 生活困窮者を支援している一般社団法人・つくろい東京ファンドの稲葉剛代表理事(51)は「劣悪な宿泊所では十数人の大部屋に入れられ、不衛生で皮膚病になったり、知的障害者がいじめられることがある。相部屋を避けて路上生活を選ぶ人もいる」と指摘する。
 稲葉さんの元には、新型コロナの影響で職を失い社宅を出ることになったり、滞在先のインターネットカフェが休業したりして「行き場がなくなった」という相談が相次いでいる。自治体から無料・低額宿泊所の相部屋を紹介されたケースもあるというが、稲葉さんは「今も感染対策が十分でない宿泊所は少なくない」と懸念する。
 厚労省は四月中旬、新型コロナの影響で住まいを失った人には個室を提供するよう通知した。路上生活者の支援・調査に携わる研究者の北畠拓也さん(29)は「感染拡大に伴い、生活保護受給者も増える。行政は感染を広げないよう、個室へのあっせんを徹底し、無料・低額宿泊所での生活環境も調査する必要がある」と話している。

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