<新型コロナ>詳細議事録 作成せず 専門家会議巡り内閣官房 政策決定の検証に壁

2020年5月14日 02時00分

首相官邸のウェブサイトに掲載されている「議事概要」

 新型コロナウイルス感染症への対応を医学的見地から助言する政府の専門家会議を巡り、運営の庶務を担う内閣官房が、発言者を明記した議事録を作成していないことが分かった。現在は主な発言を匿名で箇条書きした「議事概要」を公開しているのみで、担当者は取材に「委員に自由闊達(かったつ)な議論をしてもらうため。議事録を作る予定はない」と説明した。詳細な議事録がないことで、具体的な政策決定過程が検証できなくなる恐れがある。 (小沢慧一)
 専門家会議は感染症の専門家らで構成。これまでに非公開で十三回、開かれた。保健所への相談の目安や、人との接触機会の八割削減などを助言した。安倍晋三首相が、緊急事態宣言延長の意向を表明した四月三十日に「専門家の意見を聞き、幅や期間を慎重に決めていきたい」と述べるなど、政策決定に重要な役割を果たしている。
 首相官邸は十三日現在、第四回までの内容を議事概要としてウェブサイトに掲載。日時と場所、出席者の記載はあるが、発言内容は匿名の箇条書きだ。
 例えば、第一回会議では「重症で原因が不明のときにPCR(検査)を回すのが妥当ではないか」「子供の陽性例は少なく、軽症が多い」といった発言が記されているが、発言主は分からない。
 議事録を含む公文書の取り扱いについて、政府は「行政文書管理ガイドライン(指針)」で規定。外部の有識者らによる懇談会を開催する際は「意思決定の過程を検証できるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成する」と求めている。
 専門家会議は懇談会に該当するが、内閣官房の担当者は「指針は、誰が何を言ったかなど発言者と発言内容をひも付けることまで求めていない」と述べた。その上で「議事概要公表は指針の趣旨目的を踏まえている。今後も(誰が何を発言したかが分かる)議事録を作成する予定はない」と話した。
 内閣府の公文書管理委員会の委員としてこの指針の策定に関わった三宅弘弁護士は「指針は『発言者及び発言内容』と明記しており、誰の発言なのかを記す義務がある。議事概要では政策決定過程が検証できる資料とは言えない」と指摘。「詳細な議事録を作成し、情報公開法にのっとり公表の是非を決めるのが政府の正しい態度」と話した。
 新型コロナ対策の議事録を巡っては、加藤勝信厚生労働相が三月二日の参院予算委員会で「議論が分かるようなものを出していく」と答弁。西村康稔経済再生担当相は同十七日の同委員会で、専門家会議を含めた関連の会議について「しっかり記録を残したい」と答えた。
<新型コロナウイルス感染症対策専門家会議> 国立感染症研究所の脇田隆字所長が座長で、地域医療機能推進機構の尾身茂理事長が副座長を務める。感染症の専門家や医師など12人で構成。座長が出席を求める関係者には、「人との接触8割減」の効果を試算した西浦博北海道大教授らがいる。第1回会合は2月16日。会議の終了後、尾身氏らが会見を開き、概要を説明。会議の参考資料も配布している。

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