「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督 快挙の裏に東日本大震災の経験

2022年3月28日 19時25分

米ハリウッドで27日、「ドライブ・マイ・カー」で第94回米アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督=AP

 米アカデミー賞で、日本映画として13年ぶりに国際長編映画賞に輝いた濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」。東日本大震災のドキュメンタリー映画製作時の監督の体験が作品に大きく影響していた。
 物語の一つの軸が、主人公を送迎する車中で展開される会話劇。妻を亡くした舞台演出家(西島秀俊さん)と寡黙な女性運転手(三浦透子さん)は、車中で互いの悲しみを口にしながら次第に心を通わせていく。それは震災発生から約2年行っていた被災者取材の帰り、共同監督の酒井耕さんが運転する車中で取材を振り返りながら2人だけで過ごした時間を重ね合わせたものだと、昨年、本紙とのインタビューで明かした。

カンヌ国際映画祭渡航前、本紙の取材に応じた濱口竜介監督=東京都渋谷区で、昨年7月撮影

 「車中で出てくる言葉って率直で適度な余韻がある。互いに見つめ合わないから黙っていられるし、思ったことも言える。特殊な閉鎖空間だからこそ、言葉がぽつぽつとこぼれていくような時間があった」。大きな悲しみにいる人たちと向き合う中で気づいたのが、車中だからこそ生まれる人間関係だった。
 震災11年の3月11日、8部門で最優秀賞に輝いた日本アカデミー賞では、ドキュメンタリー撮影時の思いを吐露していた。「被害に遭った方々が示してくれた力強い生きる姿があって、こういう生命力を捉えていきたいと思った。それが今、自分が監督をする基盤になっている」
 手話を取り入れた劇中劇で、せりふに生きる力をちりばめたのはその表れだろう。喪失感漂うこの生きにくい時代を懸命に生きていこうというメッセージが、人種や言葉などの違いを越えて伝わったのではないか。本作は監督の震災への思いと覚悟から生まれたものでもある。(藤原哲也) 

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