<ぱらぱらじっくり 教育に新聞を>切り抜きコンクール 受賞作から(4)好きなモノ とことん!

2022年3月29日 07時40分

◆地域の魅力や趣味を深掘り

※3作品のタイトル部分を合成しました

 東京新聞が主催する新聞切り抜き作品コンクールには、小、中、高校生が社会問題や国際ニュースと懸命に向き合った作品が多く寄せられる。次世代が社会に目を向けるきっかけとなる大切な学びだ。一方で、好きなモノにとことん注目して新聞記事を集め、深掘りするタイプの切り抜き作品もある。そうした作品づくりでも、子どもたちは健やかに伸びる。 (東松充憲)

◆記事で学んで

 「私は栃木のお花が大好きなので、みなさんに知ってもらいたいと思ってつくりました」。宇都宮市の作新学院小学部二年、小野田有(ゆう)さん(8つ)は、切り抜き作品づくりの動機をそう話してくれた。
 作品名も「きれいなとちぎのお花」。栃木県内各地の花々の開花や見ごろを知らせる新聞記事は、やはり地元紙が充実している。小野田さんは自宅で購読している下野(しもつけ)新聞に花の紹介記事が載ると大事に保存。十枚の写真と十六枚のイラストがちりばめられた作品は、佳作に選ばれた。
 花について紹介する記事を新聞社では「花もの」と呼んだりする。小野田さんはそうした花ものの記事から「花言葉」や、花の不思議な形、香りなどを学んでいった。
 まとめの文章には「今はなかなか行けないけれど(略)いつか行こうと思います。おはなのきじや、しゃしんで、とてもしあわせな気もちになりました」と記した。
 下野新聞社編集局の三浦一久地域センター長は「私たち地方紙の記者は、四季折々の風物詩を読者に届けるため、多くの『花もの』を取材します。記事の向こう側には、コロナ禍で花を見に行けない読者がいます。だからこそ、こうした形で読者に記者の思いが伝わったことを大変うれしく思います」と喜んだ。

◆絶妙な見出し

 地域の魅力に着目したこうした作品は、茨城県内からも届いた。日立市立櫛形(くしがた)小学校六年の岩川空さん、佐川結菜さん、和田祐凛さんが作ったのは、地元のおいしいモノを伝える記事ばかりを選んで使った作品「よだれが止まらない超うまグルメ」。このネーミングの巧みさが審査員からも注目を集め、小学生の部で「入選」に選ばれた。
 作品に使われた記事の半数は地元紙・茨城新聞からの切り抜きだ。茨城新聞社の澤畑和宏NIE事務局長は「みんなでワイワイ楽しく新聞を読む姿が目に浮かぶ作品です」と感想を話した上で、児童らの学びにこう期待する。
 「新聞には『旬』が詰まっています。茨城は農業県。これからも、新聞で季節を感じながら、よだれが出そうな地元の名物を見つけて、みんなに知らせてほしいです」

◆ダイナミック

 千葉県柏市の芝浦工業大柏中学校の滝沢煌(こう)さんの「宇宙への挑戦」は、宇宙空間を背景に惑星や探査機、スペースシャトルのイラストがあしらわれた。宇宙ロケットなどが大好きだとの気持ちが作品にあふれる。新聞記事も宇宙にかかわるものを集め、ダイナミックに配置した作品に仕上がった。中学生の部で努力賞に選ばれた。
 芝浦工大柏中では例年、二年時に切り抜き作品づくりに取り組む。二〇二〇年度はコロナ禍でコンクールが中止になった。このため昨年応募できなかった三年生と、今年の二年生が今回の第十八回コンクールに作品を寄せた。同校からの応募総数は三百五十八点で参加校中最多だった。

◆新聞の価値を子どもたちが教えてくれる 本社で優秀作展

最優秀賞に選ばれた切り抜き作品が展示されている=日比谷中日ビルで

 第18回新聞切り抜き作品コンクールの優秀作展が、学校の春休み時期に合わせ、東京新聞が入る日比谷中日ビル(東京都千代田区内幸町)の1階ロビーで開かれている。見学できるのは午前10時〜午後5時。無料。土日も開催しており、4月5日まで。
 切り抜き作品は大きさが模造紙サイズ(約八十センチ×約百十センチ)。ひとつの作品に十から二十ほどの記事スクラップが使われる。児童・生徒が記事を読んで考えた感想の文章もぎっしり記され読み応えがある。
 作品が大きいため内容すべてを新聞の紙面で紹介するのが難しい。展示なら実際の作品を間近でじっくり読める。会場には小中高の各部門の最優秀作品計三点の現物が、受賞者らの笑顔の写真とともに並ぶ。
 障害者をめぐる課題や、新型コロナがもたらした困難さ。民主主義の危機。新聞記事が伝え、問題提起する社会問題に、子どもたちが真剣に向き合い、自分の言葉で意見を記した。手間と時間をかけて完成させた切り抜き作品からは、児童・生徒の成長が伝わってくる。新聞の価値を子どもたちが教えてくれる。
 新聞が提供する確かな情報を基に社会問題を自分事(じぶんごと)ととらえる切り抜き作品づくりの学びは、親世代からも評価されている。展示では親の目から見た意見も紹介している。
 学校現場には近年、タブレット端末が普及した。デジタル新聞のよさを生かしたNIEの取り組みも徐々に広がってきた。今回のコンクールでは、高校生の部で東京新聞電子版を補完的に使った作品が優秀賞に選ばれた。その現物も展示された。

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