<新型コロナ>ホームレス苦境、支援の輪 収入源の雑誌街頭販売低迷

2020年5月12日 16時00分

人通りが減った東京・渋谷の路上でビッグイシューを販売する男性(右)。外出自粛で売り上げが激減している=4月

 ホームレスの人らが街頭で販売する雑誌「ビッグイシュー」の売り上げが外出自粛の影響で落ち込み、発行するビッグイシュー日本(大阪市)は販売者を支えるため、4月9日から3カ月間限定の緊急通信販売を始めた。申し込みは4月末までに当初目標の4倍の8000件を超え、応援の輪が広がっている。ただ販売者の生活環境は厳しいままで、新型コロナウイルス感染の不安を抱えながら路上販売を続けている。 (神谷円香)
 食品売り場を除いて休業している東京都渋谷区の東急百貨店本店前。販売者の男性(57)は、普段通り二十冊を東京事務所(新宿区)で仕入れてからいつもの場所に来た。三月に入ってから半分以上売れ残る日が増えた。百貨店で働く人や近くの会社員が常連客だったが、「テレワークになったのかな、見なくなった人もいる」と話す。
 心配して買いに来てくれる人もいる。「人がいるなら販売を止める理由はない。でも感染の恐れもあるから複雑。罪悪感もある」。事務所からマスクをもらい、手はこまめに洗っているが、不安は常にある。寝泊まりする格安のネットカフェも閉まるところが多くなった。売り上げが落ち、節約し新宿の路上で休む日も増えた。「余裕があれば閉じこもるけど、こもれる部屋があるわけでもない。なるべく一人でいますよ」
 ビッグイシュー日本では、以前からの販売部数減少で赤字経営が続くため四月から雑誌価格を百円値上げし、四百五十円としてデザインも一新したところにコロナ禍に見舞われた。販売戦略も変え、これまで販売者のいない地域にのみ通信販売していたのを、全国どこからでも年間定期購読を可能にしたところだった。
 今回の緊急販売は定期購読とは別で、四~六月発行の六冊を順次郵送で届ける。六冊セット価格は二千七百円で、送料六百円が別途かかる。収入の半分以上は、雑誌の売り上げのみが収入源の全国の販売者に還元する。四月三十日に一回目の支給で六十三人に五万円ずつ渡し、五、六月も支給できる見込みだ。
 東京事務所の佐野未来(みく)所長は、予想以上の応援に感謝しつつ、感染の不安と隣り合わせの販売者の行き場がないのを気に掛ける。「行政の無料・低額宿泊所も相部屋が多く、現場で対策が徹底されていない。感染の心配がないところで体を休められるようにしてもらえたら」と話す。
 緊急販売の申し込みはビッグイシュー日本の公式サイトで、六月三十日まで受け付ける。注文の急増で発送に時間がかかっている。定期購読も常時受け付けている。問い合わせは大阪本社=電06(6344)2260=へ。
<ビッグイシュー> ホームレスの人たちが収入を得る機会にと、1991年に英国で生まれた雑誌。日本版は2003年に創刊し、月2回発行する。販売者は初めに10冊を無料で受け取って1冊450円で売り、その後は売り上げを元手に1冊220円で仕入れ、230円を自身の収入にする。販売者は自分の住まいを持たないか、家があっても生活に困る人で、販売中に代金以外の金品を受け取らないなどの行動規範がある。

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