<ふくしまの10年・行ける所までとにかく行こう> (16)だめです Uターンして

2020年5月13日 02時00分

福島第一原発前では防護服に身を固めた作業員たちを乗せた車両が通り過ぎた=福島県大熊町で(豊田直巳さん提供、一部画像処理)

 もっと近くから東京電力福島第一原発を見たいと、写真家の豊田直巳さん(64)は二〇一一年四月十八日、原発のすぐ近くまで進んだ。
 所々で路肩が崩れるなどしていたものの、原発の敷地は一面に松林が広がり、植栽はきれいに刈り込まれている。人影はなく、妙に静まり返っていた。とても目の前で、最悪レベルの原発事故が起きているとは思えなかった。
 松林の間から排気筒(高さ百二十メートル)の上部が見え隠れするほかは、建屋などはまるで見えない。
 だめと思いつつ、正門で警備員に取材させてほしいと頼んだ。「だめです。ここでUターンしてください」。予想通りの答えだった。
 原発の目の前にいるのに何も撮れないのか。焦りつつ、正門手前にある見学施設「サービスホール」近くで撮影していると、次から次へと作業員を乗せたマイクロバスやバン、重機を載せた大型トレーラーが出てきた。
 車体には「東京電力支援 緊急支援車両」の表示。ゼネコンの車両だった。作業員は全員、白い防護服に全面マスクのフル装備で、レンズを向ける豊田さんに手を上げてあいさつする人もいた。
 原発の直近では十分な取材はできなかったが、過酷な事故収束作業の担い手たちの姿は見ることができた。
 当時、豊田さんが見た景色は現在はがらりと変わった。見学施設は取り壊され、周辺は新事務本館や作業員のための大型休憩所、緊急用のヘリポートなどになった。視界を遮っていた松林はほぼなくなり、高濃度汚染水を処理した水をためるタンク群の用地へと変わった。

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