<ふくしまの10年・行ける所までとにかく行こう> (15)放置された公民館

2020年5月12日 02時00分

無人の公民館には、自転車やバイクが置きっぱなしになっていた=福島県双葉町で(豊田直巳さん提供)

 二〇一一年四月十八日、双葉町郡山地区にある防潮堤から、東京電力福島第一原発の姿を見た写真家の豊田直巳さん(64)は、もっと近くから見ようと南へ車を向けた。途中、目についたのが同地区の公民館だった。
 三角屋根が特徴的な海の家「マリーンハウス」などは大津波に襲われていたが、公民館の周辺は小高い丘にあり、津波被害は免れていた。
 瓦屋根の公民館の前にバケツが置いてあり、自転車とスクーターが止まっていた。豊田さんは「ひょっとして人がいるのか?」と気になり寄ってみた。
 公民館入り口脇には「ひなんばしょ 原子力災害時集合場所」の看板があり、放射線量などを監視するモニタリングポストも設置されていた。玄関には「対策本(その下は紙が破れ飛んで読めず)」の立て看板が出され、原発事故の発生で、何らかの対応が取られた様子だった。
 しかし、玄関は施錠もされず開けっ放し。中をのぞいてみると、会議机の上にカセットこんろとホットプレートが置かれ、何か食べた形跡はあったが、それ以上の動きはなかったように感じたという。
 本紙が双葉町役場に当時の状況を確認したところ、三月十一日、事前の計画に従って同地区の住民の何人かが公民館に集まった。しかし、原発の状況はどんどん悪化。福島県が午後八時五十分に原発二キロ圏に避難指示を出し、一部が二キロ内にかかる同地区の住民は、約六キロ西の山田地区や石熊地区に即時避難することに。翌朝には避難指示が十キロ圏まで拡大され、事前の計画は吹き飛び、住民は転々と避難を迫られることになった。

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