10種目で世界一へ 競技ダンス 八谷和樹・皆川円

2022年3月30日 13時00分

プロのダンサーとして世界一を目指す八谷和樹(右)と皆川円=千葉県我孫子市で

 スポーツは上達するにつれ、得意種目に絞り専門化が進む。これは競技ダンスの世界も例外ではない。しかし、そんな常識にあらがうように八谷(はちや)和樹(23)=千葉県我孫子市=はスタンダードとラテンアメリカン両部門の10種目すべてにこだわる、誇り高きオールラウンダーだ。
 八谷は大学卒業後の昨年六月、三大大会の一つ日本インターナショナルダンス選手権で、アマチュアのスタンダード、ラテンアメリカン両部門を制し、パートナーの皆川円(まどか)=茨城県取手市=とともにプロに転向した。パワフルで繊細さを併せ持つ二人の演技は他の追随を許さない。アマ時代、三大大会の全てで両部門を制した唯一のペアだ。

八谷・皆川ペアのラテンアメリカン部門の演技=21年の日本インターナショナルダンス選手権から(八谷さん提供)

 プロデビュー戦となった昨年十月のプロ統一全日本10ダンス選手権。八谷・皆川ペアは10種目すべて1位の完全優勝を遂げた。10(テン)ダンスはアマ時代に全日本選手権で5連覇したが、プロでも無敵を証明した。八谷は「自信はあった。周囲も優勝するだろうと見ていたはず」と言い切る。
 予選から10種目を踊るため、肉体的にも精神的にもタフさが求められる。この最強の万能選手ぶりを他競技に例えるなら、体操の内村航平といったところか。また二部門ともに結果を出すことから、八谷自身は「おこがましいですが、大谷翔平選手によく例えられます」と投打の二刀流メジャーリーガーを挙げた。
 八谷はプロのトップダンサーとしてペアを組んでいた両親が我孫子市内で経営するダンス教室で幼少期から遊び、自然にダンスを始めた。陸上競技やテニスも得意だったが、中学時代にダンスに専念。中学三年生で10ダンスの日本王者になるなど、ジュニア時代から国内外の多くの大会で優勝してきた。
 そんな八谷と皆川が互いのコーチの薦めでペアを組んだのが八谷が高校一年の二〇一四年。年上の皆川はラテンアメリカン部門の日本のユースチャンピオン。当時、出身地の岩手県一関市に住んでおり、毎週水曜に夜行バスで上京し四日間練習して岩手に帰るという生活が始まった。
 皆川が当時を振り返る。「私をぐいぐいと引っ張ってくれた。私は10ダンスをやれる喜びも強かったし、この人となら世界チャンピオンになれると思った」。ダンサーの両親を見て育ち、パートナーの大切さを人一倍知る八谷は「やる気がすごかった。精いっぱい頑張る人なのでそこにかけていた」。互いをリスペクトし強い絆で結ばれた。
 翌一五年に競技会デビューした八谷・皆川ペアは、まもなく両部門でアマのトップに君臨する。ダンス教室にズラリと並ぶトロフィーが二人の戦績を物語る。二十年前からレッスンに通い、八谷の成長を見守ってきた田中いち代さん(71)は「和樹君のダンスには物語がある」と魅了された。

八谷・皆川ペアのスタンダード部門の演技=19年の日本インターナショナルダンス選手権から(八谷さん提供)

 プロ転向後、八谷は教室で講師もはじめたが、それでも毎日、営業前後の時間を利用して皆川との五、六時間のペア練習は欠かさない。プロ選手の多くは、スタンダード、ラテンアメリカンを専門に取り組んでおり、それぞれのレベルは格段に高い。
 「世界チャンピオン、世界のファイナリストになる」。揺るぎない目標に向かって突き進む。 (敬称略)
<競技ダンス> スタンダード部門5種目は、ワルツ、タンゴ、ヴェニーズワルツ、スローフォックストロット、クイックステップ。競技会では男性はえんび服、女性はロングドレスを着用することが多い。
 ラテンアメリカン部門5種目は、チャチャチャ、サンバ、ルンバ、パソ・ドブレ、ジャイブ。男性はワイルドな衣装で、女性は肌の露出が多めのドレスが一般的。
 通常の競技会は二つの部門に分けて行われる。10種目すべての総合で争うのが10ダンス競技会。両方の部門に取り組むオールラウンダーは、10ダンサーとも呼ばれる。
 文と写真・牧田幸夫

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