<らくご最前線>立川吉笑 論理に翻弄される快感

2022年3月30日 07時38分
 若者に人気の定例落語会「渋谷らくご」は毎年「渋谷らくご大賞 おもしろい二つ目賞」「渋谷らくご創作大賞」を一人ずつ選出しているが、二〇二一年は立川吉笑が史上初のダブル受賞。それを記念する吉笑の独演会が二月十九日に東京・お江戸日本橋亭で開かれた。
 一席目は、今この高座で語っている吉笑が実は人間たちが操縦するロボットだったという設定の「落語家」。吉笑の高座とそれを操縦する人間たちの場面を並行して演じる二重構造の話だ。
 二席目は創作大賞受賞作の「床女坊(とこじょぼう)」。床屋、女性、坊さんの三人連れが二人乗りの舟で川を渡りたいと船頭に言うが、女性が「私を床屋や坊さんと二人きりにしないでほしい」と条件を付け、船頭は頭を悩ませる。有名な数学パズルだが、この話では「坊さんは二人分の体重」「オオカミとヤギも連れている」「坊さんは人がいないとオオカミを殺す」等、縛りがどんどん増えて大変なことになる。
 三席目は松ヤニをなめて上下の唇が貼りついた八五郎が隠居に相談する「ぷるぷる」。口を閉じ唇をプルプルさせてしゃべる状況がとにかくおかしい、という話。
 四席目は「乙の中の甲」。貸した金を返せと言う熊五郎に八五郎が「俺の中のおまえはそんなこと言わない」と主張、熊五郎は「おまえの中の俺はおまえだろ」と言うが、八五郎は「丼からあんこをすくって皮で包んでもあんこはあんこ。おまえを俺で包んでもおまえはおまえ」と譲らない。熊五郎は「じゃあ俺は俺の中のおまえに会ってくる」…という展開から吉笑ロボットの高座へ。この会全体が一つの仕掛けだったというオチだ。
 アクロバティックな論理に翻弄(ほんろう)される快感がたまらない、吉笑の世界。二つ目となって十年、真打ちへのカウントダウンはもう始まっている。 (広瀬和生・落語評論家)

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