<コロナ 医療を守ろう>「看護師の自分は捨て駒」 集団感染の都内病院、切迫

2020年5月11日 02時00分

防護服などの正しい着脱について紹介する日本看護協会の動画=ユーチューブより

 新型コロナウイルスの集団感染が起きた、東京都内の総合病院に勤務する女性看護師が、医療物資の不足が切実な現場の状況を語った。ごみ袋を防護服の上から着用しており、患者に接する看護師の心身の疲労は日増しに大きくなっている。それでも、危険手当は日額数百円。「『自分は捨て駒』と涙ぐむ同僚もいる」と話し、切迫する現場への理解と手当増額を訴えた。 (奥野斐)
 看護師は、中規模病院の呼吸器内科に勤務。四月から感染者の受け入れを始め、現在も陽性者が入院中だ。感染リスクを減らすため、医師はカルテ診察が中心になったが、看護師は一定期間の交代制で二十四時間、患者に接している。
 防護服は、当初使っていた厚手のものが底を突き、届いた代替品は素材が薄く、首回りも空いていた。感染症の専門医に相談し、七十リットルほどの市販のごみ袋を細工して上から着用。「防護服を脱いだり、マスクを外したりする過程で感染リスクが高いと聞いた。大丈夫かと不安になる」
 もともと陰圧室などの設備もなく、感染症対策の経験がない看護師が多い中、動線や防護服の着脱の訓練をし、受け入れ態勢を整えるまでに一カ月を要した。
 四月、症状のない患者の陽性が発覚し、院内感染が判明。報道されると、転院が決まっていた患者は受け入れ先から拒まれ、退院予定の患者は退院後の介護サービスが受けられなくなり、延期に。世間の風当たりの強さを感じ、悲しむ患者の姿に胸を痛めた。
 防護服は長時間着ると蒸れ、高性能マスクは息苦しく、身体の負担も大きい。陽性者の対応で夜勤帯は一人増員され、シフトもきつくなった。新型コロナで急に症状が悪化した患者をみとった看護師など、突然涙を流す同僚もいる。
 感染者に対応した看護師には危険手当が支給されるが、日額数百円だ。「地方出身で独身の看護師は、帰省もできず、家と病院との往復の毎日。微々たる手当で『自分たちは捨て駒だ』と話している」という。
 十分な感染防止対策ができぬまま患者に接する緊張と不安が大きい。「せめて手当は増やしてほしい」と求める。「看護師が倒れたら医療崩壊につながる。過酷な状況を知ってもらい、一人一人が感染拡大を防ぐ行動を取ってほしい」と訴えた。

◆都立は340円 「拡充検討」

 感染症患者の対応にあたった看護師への危険手当は、それぞれの医療機関や病院を運営する自治体が対象や額を決めている。日本看護協会は四月、新型コロナウイルス感染症に対応した看護師の手当の増額と、個人支給を求める要望書を、西村康稔全世代型社会保障改革担当相、加藤勝信厚生労働相宛てに提出した。
 東京都によると、都立病院で感染者の対応にあたった看護師には「防疫等業務手当」として日額三百四十円を支給。都総務局の担当者は「対象や手当の拡充を検討している」と話す。
 都が参考にするのは、国家公務員の給与を定める人事院規則の同様の手当、日額二百九十円だ。人事院によると、国立病院は独立行政法人化され、対象はいないが規定は残っている。
 一方、政府は中国・武漢からの政府チャーター機や「ダイヤモンド・プリンセス号」内などで新型コロナ対策をした厚労省職員らに日額で最大四千円を支給している。

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