戦闘長期化で双方歩み寄りも停戦条件になお隔たり ロシア・ウクライナ停戦交渉

2022年3月31日 06時00分

29日、イスタンブールでのロシア代表団のメジンスキー大統領補佐官㊧とウクライナの交渉担当者で最高会議(国会)議員のデービッド・アラハミア氏=ウクライナ外務省提供、AP

 ロシアとウクライナが29日にトルコで開いた停戦交渉は、ウクライナの中立化や武装解除を巡る議論で双方の歩み寄りがみられた。戦闘の長期化が大きな負担となっているためだが、ウクライナ南部と東部の主権を巡る隔たりは大きい。中立化に向けた具体的な枠組みも課題は多く、先行きは楽観できない。(ヨーロッパ総局)

◆ウクライナの「NATO非加盟」で一定前進

 「話し合いは建設的だった」。交渉後にロシアのメジンスキー大統領補佐官が述べたように、ウクライナの立場を巡る議論では一定の前進があった。侵攻前からロシアがこだわってきたウクライナの北大西洋条約機構(NATO)非加盟を、ウクライナ側が「中立化」との名目で事実上受け入れる姿勢をみせたという。
 一方、ロシア側は要求してきた「完全な非武装化」について、「ロシアに脅威を与えない程度の軍事力維持は認める」と態度を軟化。それに歩調を合わせるかのようにウクライナ側も核兵器を保持せず、核武装もしない「非核国」の地位を維持することを宣言する意向を示す。
 とはいえウクライナ側は楽観視していない。ロシア国防省は首都キエフ周辺の軍事活動縮小を発表したが、キエフから西部リビウに避難しているナドゥヤ・シュバールさん(34)は「ロシアは言うこととやることが違うので、『最悪の事態』にも備えないといけない」と警戒する。

◆ロシア軍の戦死者1万人?ウクライナ被害額68兆円

 両国が歩み寄りを示す背景には戦闘の長期化による疲弊が大きい。ロシア側は主戦論を唱えるプーチン大統領と側近らが交渉の行方を左右するとみられるが、財界人を中心に停戦を求める声は根強い。プーチン氏の側近であるショイグ国防相も動静が途絶えたことが指摘されるなど、軍内部で混乱が起きている可能性が取り沙汰されている。
 欧米の国防当局はロシア軍の戦死者が1万人に達していると分析。日米欧からの対ロ制裁発動で、経済混乱が続く中、侵攻継続は難しい状況だ。ウクライナも経済省が侵攻の被害額が既に5600億ドル(68兆円)に達したとみており、早期の停戦合意は両国の「本音」といえる。

◆クリミア半島、東部2州、「中立化」枠組み…合意はまだ遠く

 ただ、合意へのハードルはまだまだ高い。交渉のカギを握るのは領土主権と安全保障だ。
 29日の交渉でウクライナ側は、ロシアが2014年に併合したクリミア半島について「15年かけて協議する」と事実上の棚上げを示唆したが、ロシア側は「自国領」と従来の立場を変えていない。同年からウクライナ政府軍と親ロ派武装勢力の間で戦闘が続くウクライナ東部2州(ドンバス地域)を巡っても、交渉継続の姿勢を示すウクライナ側に対し、ロシア側は侵攻直前に承認した「独立国」を撤回していない。
 ウクライナを巡る「中立化」の枠組みづくりも難航しそうだ。ウクライナは米欧や中国、イスラエル、トルコなどを加えた安保枠組みの新条約締結を提唱した。ただこの枠組みは、NATOと同じく集団的自衛権を備えており、ロシアが再びウクライナで軍事行動を起こせば条約締結国はロシアとの戦闘に参加することが求められる。ロシアの拒否はもとより、米欧も二の足を踏むことが予想される。

おすすめ情報

ウクライナ危機の新着

記事一覧