存在感増すネット配信 映画もドラマも オリジナルの話題作 続々登場

2022年3月31日 07時17分
 インターネットで配信されるオリジナルのドラマや映画が人気を博すのが当たり前の時代になった。世界最高峰の映画賞、米アカデミー賞でも配信発の作品のノミネートが普通になり、存在感は増すばかりだ。日本でも市場規模の拡大により配信作品への期待は高まっており、有名監督らが配信作を手掛ける事例も出てきた。 (藤原哲也)

ネットフリックスで独占配信中のドラマ「新聞記者」

 米動画配信大手ネットフリックス(ネトフリ)は、豊富な資金を背景に、早くからオリジナル作品に注力してきた。韓国ドラマ「愛の不時着」「イカゲーム」などは国を超えて人気になり、映画「パワー・オブ・ザ・ドッグ」は今年の米アカデミー賞で最多十一部門にノミネートされ、監督賞に輝いた。
 日本では二〇一五年からサービスを開始し、話題を集めたドラマ「全裸監督」など昨年までに実写とアニメで約九十本を配信。今年も本紙が撮影協力したドラマ「新聞記者」など豊富なラインアップだ。広報担当者は「世界のエンターテインメントファンを楽しませるのがミッション。今後もさまざまなクリエーターと手を組み、世界へ発信する一翼を担いたい」と話す。
 米大手のアマゾンプライムビデオ(アマプラ)も負けていない。やはり一五年から国内サービスを始め、これまでオリジナルのドラマやバラエティーなど約四十本を配信し、二月からオリジナル邦画第一号の「HOMESTAY(ホームステイ)」の配信を始めた。広報担当者は「試行錯誤を繰り返して映画までたどり着いた。何が喜ばれるのか愚直に考え続けて、コンテンツの魅力を高めたい」と力説する。

アマゾンプライムビデオで独占配信中の「HOMESTAY」©2022 Amazon Content Services, LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

 民間調査会社「ジェムパートナーズ」によると、二一年の定額制動画配信サービスの国内市場規模は、推計で前年比六百億円以上増の三千八百六十二億円。国内映画興行収入の二倍以上だ。一六年の市場規模は千二百二十八億円で、計算方式が違うため単純比較はできないが、大きく伸びているのは間違いない。
 なぜこれほど動画配信が広がったのか。立教大の砂川浩慶教授(メディア論)は衛星放送などに比べた料金の安さ、スマートフォンで見られる手軽さに加え、業界事情も関係しているという。複数の企業が関与する製作委員会方式の映画はヒットを求めてジャンルが偏る傾向があるが、「『全裸監督』もそうだが、映画館やテレビで普通に見られないものを見せた。多様な作品を求める視聴者の思いに応えている」と語る。

◆想像超える急成長

 砂川教授は、テレビ・映画業界が動画配信がここまで成長すると思っていなかった節があると指摘する。「テレビ業界で、ネット配信を『補完』という人がまだ多いことが象徴的。ネットは今や補完どころではないはずなのに」
 配信業界とテレビ・映画業界は競合する立場だが、制作面の連携などは一部で行われている。東映の手塚治社長は二月に開いた今年のラインアップ発表会で、「配信の登場は業界の大きな転換点だと思うが、配信で映画の魅力を再発見する人も多く、スクリーンで見る映画がなくなるとは考えていない」と強調した。

◆問われる制作力

 ただ、テレビも映画も制作会社に頼る面が多く「制作会社に制作力があれば、テレビ局や映画会社に用はなく、直接組むという話になる。今後、テレビも映画も余計に制作力が問われていく」と砂川教授はみる。
 一部の放送局でプロデューサーらが配信会社に移籍しているといい、自由な制作環境を求めて、実績ある映画監督らが配信作に携わる事例も増えつつある。ネトフリは、「万引き家族」でカンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを受賞した是枝裕和監督とタッグを組み、映画と連続ドラマを一本ずつ制作予定だ。
 映画評論家の関口裕子さんも世界配信のハードルの高さはあるものの、配信での映像制作が加速するとみている。「企画に対して予算などの条件が整えば、プロデューサーや作家側は配信だから映画だからというよりも、作ることに重きを置くのでは」と予測する。
<動画配信の利用者> ネトフリは20年に500万人を突破したと発表して以降は公表していない。アマプラは国内非公表。他の事業者もほぼ非公表だ。ジェム社が21年に国内の約2万人(15〜69歳)を対象にした調査で、定額制動画配信サービスの利用率は35.2%。シェアは市場規模ベースでネトフリが1位、アマプラが2位。動画配信サービスはコロナ禍による在宅率の高さなどから伸びている。

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