<ふくしまの10年・行ける所までとにかく行こう> (14)「見えるじゃないか」

2020年5月9日 02時00分

事故発生から1カ月以上たっても、福島第一原発2号機からは高濃度汚染された水蒸気が上がっていた=福島県双葉町から(豊田直巳さん提供)

 この惨禍を引き起こした東京電力福島第一原発はどんな状況なのか。事故発生から四回目の現地取材を続ける写真家の豊田直巳さん(63)だが、まだ原発の姿を直接見ていなかった。
 二〇一一年四月十八日、探し回ってたどり着いたのが、双葉町の海水浴場近くに突き出した一本の防波堤だった。原発からの距離は約三・五キロ。望遠レンズを付けたカメラを背負い、消波ブロック積みの足場の悪い防波堤を進むと、津波と水素爆発により無残な姿となった福島第一が目に飛び込んできた。
 「うわあ、見えるじゃないか」。1号機の原子炉建屋上部は壁が吹き飛び、鉄骨があらわ。2号機は原形をとどめているものの、水蒸気がもうもうと上がっている。「あの水蒸気には膨大な放射能が入っているはず」と直感した。その奥の3、4号機原子炉建屋は上部が崩落し、屋根の鉄骨がぐにゃぐにゃに曲がって積み上がっていた。
 東電公表の当時のデータを見返すと、事故発生から一カ月以上たっていたが、炉内温度は1~3号機とも一〇〇度を超え、大量の注水で暴走を抑え込んでいた。使用済み核燃料プール(2号機)の水温は約六〇度。長いアームを備えたコンクリート圧送車を使ってプールに水を補給し、干上がるのを防いでいた。豊田さんの写真には、3号機に放水する圧送車の赤いアームが写っている。
 豊田さんの直感通り、2号機から上がる水蒸気は放射能汚染の最大の原因で、全放出量の半分を占めるとされる。損傷した格納容器下部から漏れた汚染蒸気が、建屋上部の換気口から流出していた。

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