<新型コロナ>創意工夫で乗り越えよう 個性的な布マスク、ビールをジンに蒸留

2020年5月9日 09時01分
 「必要は発明の母」というが、日常を一変させたコロナ禍の中で創意工夫は生まれる。不織布マスクの供給不足で、服地などを使った個性的な布マスクが次々と登場。茨城県では酒蔵が、売れ残ったビールを長期保存できるジンに蒸留するサービスを始めた。

◆こんな時だからこそ…気分明るくする布マスク

 「こんな時だからこそ、気持ちを明るくしてもらいたい」。布マスクのデザインや素材には作り手の思いが込められている。

ゾウやキリンをあしらったMIDDLAのマスク。ブラウスとのコーディネートも(MIDDLA提供)

 小さな花がかわいらしいワスレナグサや、ゾウやキリンなどをあしらったマスクを製作するのは、ファッションブランド「MIDDLA(ミドラ)」(文京区)のデザイナー安藤大春(おおはる)さん(47)。税込み二千五百円で二月に発売、既に約二千枚売れた。
 持続可能社会に向けたごみ削減のため、ブラウスなどの余り生地を花粉症向けのマスクにしようと、昨年から準備を進めた。それがマスク不足と重なった。「予想より反響がすごい。沈んだ空気の中、おしゃれなマスクで気持ちを盛り上げて」と安藤さん。

◆赤ちゃんの肌着に使うガーゼを素材に

自然な風合いのAOの生成りガーゼマスク(AO提供)

 シンプルな生成りのマスクを作るのはガーゼブランド「AO(アオ)」(新潟県糸魚川市)。肌トラブルの原因になるホルムアルデヒドをカットした、赤ちゃんの肌着などに使うガーゼを素材にした。
 五十嵐昌樹社長(47)は「マスク不足の折、安心できる材料で社会に貢献できることを考えた」。ガーゼ服を作る職人がミシンで縫う。五枚千五百円(税別)という手頃さもあり、三月十日の発売以降、十五万枚を供給した。

◆6日間で50万枚売り切れ

子ども向けも販売されているシャツ生地使用のマスク(メーカーズシャツ鎌倉提供)

 六日間で五十万枚が売り切れたマスクも。シャツ生地とガーゼを職人が縫製した「メーカーズシャツ鎌倉」(神奈川県鎌倉市)の製品で、四月十七日に予約販売を始め、二十二日に完売した。広報担当者は「想定外の反響。五月末に販売を再開したい」。子ども用は在庫があるという。

◆西陣織のシルクマスクも

西陣織のシルクで製作されたマスク(FORTUNA Tokyo提供)

 京都の伝統工芸・西陣織のネクタイ生地などを使った「FORTUNA(フォーチュナ) Tokyo」(渋谷区)のマスクは、表側のシルクのきめ細かさが特徴。税込み二千三百八十円と少々値は張るが「人件費を考慮すると赤字」とマネージャーの木下誠喜(まさき)さん(42)。同柄のネクタイとのコーディネートも楽しめる。

◆吸湿性と肌触りいい美濃和紙も

美濃和紙を素材にしたマスク(ダマスキーナ提供)

 美濃和紙60%の布から作った「ダマスキーナ」(岐阜県美濃市)のマスクも好評だ。税込み千七百六十円。四月十六日に予約販売を始めたところ生産が追い付かず、発送は一カ月半待ちという。児玉正臣社長(44)は「和紙は吸湿性と肌触りがいい」。もともと従業員向けに製作したが、評判が良く商品化した。

◆かばんメーカーのマスクホルダー

折ったキッチンペーパーなどの両端を留めるマスクホルダー(カワニシカバンプロダクト提供)

 かばんメーカーも参入。「カワニシカバンプロダクト」(高松市)のマスクホルダー(税込み千六百五十円)は、折ったキッチンペーパーやハンカチの端を留め、耳にかける道具。マスク不足解消に一役買おうと三月末に発売した。革かばんの端材などで作った千個が売り切れ、現在は素材を調達して製作。「水につけても硬くならない革なので洗える。購入者から『おしゃれだ』と評価をいただいている」と川西功志(あつし)社長(38)の声は明るい。

◆専門家は「着用時も人との距離を取って」

 先の見えない暮らしに、潤いをもたらしてくれそうなマスクだが、注意も必要だ。聖路加国際大学公衆衛生大学院の大西一成准教授(41)は「無症状の感染者がウイルスを広げないためにも、マスクは必ず着けるべきだ。ただ、布マスクも不織布製と同様、顔との隙間から飛沫が飛び出す可能性があるほか、布の種類や重ね方によっては飛沫が通り抜ける。着用時も、人との距離を取るのを忘れないで」と呼び掛ける。 (文・梅野光春)

◆樽生のビール、蒸留で長持ちのジンに変身 茨城の酒蔵の飲食店支援策

クラフトジンの蒸留が進む木内酒造の八郷蒸留所。左奥のポットスチル(蒸留装置)で蒸留される=茨城県石岡市で

 「ビールの賞味期限が迫り、捨てるしかない」。きっかけは、休業中の取引先から届いた悲痛な声だった。
 樽生ビールを救おうと、支援に動いたのは茨城県那珂市の老舗酒造会社「木内酒造」。一八二三年創業で、クラフトビールの「常陸野ネストビール」などを醸造販売している。
 樽入りのクラフトビールは賞味期限が短く、木内酒造のビールも三カ月ほどで客に提供できなくなる。そこで、ジンに蒸留すれば長期保存が可能になることに着目した。持ち込まれたビール一リットル当たり二百二十円の酒税が木内酒造に還付される仕組みで、蒸留費用を無料にでき、飲食店の負担は送料だけになった。
 預かったビールは東京蒸留所(千代田区神田練塀町)や八郷蒸留所(茨城県石岡市)で蒸留する。ビール百リットル当たり約八リットルのジンが出来上がりの目安。瓶に詰め、ラベルをつけて返却する。完成したジンは地ビールと同じように、それぞれ個性的な味になる。
 五月七日までに東京や愛知、沖縄などの飲食店から相談があり二十五店ほどのビールを受け入れ、蒸留を始めている。
 企画室の萩谷真千子さんは「コロナが終息した時に新しいお酒でお客さんを迎え、楽しく過ごしてもらえれば」と話す。
 問い合わせは木内酒造のメールアドレス(savebeerspirits@kodawari.cc)へ。 (文と写真・水谷エリナ)

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