日本で広がる卵子保存、中国では未婚女性に限り認めず 提訴の徐さん「人生を決める鍵を持っていたい」

2022年4月1日 13時24分
昨年9月、提訴した病院の前にたつ徐さん。手にした冊子には「私の子宮は私のもの」とある=本人提供

昨年9月、提訴した病院の前にたつ徐さん。手にした冊子には「私の子宮は私のもの」とある=本人提供

 将来の出産に備えて女性が卵子を凍結保存する―。日本などでも広がりつつあるこんな選択肢が、中国では未婚女性に限って許されていない。「自分自身の人生を決める鍵を持っていたい」と話す広州市の徐棗棗さん(34)は中国で初めて、未婚女性の卵子凍結を認めるべきだとの訴訟を起こした。(北京・中沢穣)
 ネットメディアで働く徐さんは、30歳のときに北京の病院で卵子の凍結保存を求めた際、医師に告げられた言葉が忘れられない。
 「まず結婚して、それから合法的に卵子凍結をしなさい」。生殖医療を行う多くの病院は予約の際に「結婚証」の提示を求める。ようやく結婚証なしで受診できる病院をみつけたが、病院側は徐さんが未婚であるとして施術を拒んだ。中国衛生省(当時)が2003年に改訂した指針「人類補助生殖技術規範」では、未婚女性に対して生殖医療技術を使うことを禁じている。
 中国では政府を直接訴える行政訴訟はハードルが高い。このため徐さんは19年、病院を相手取って裁判を起こした。昨年9月に2回目の審理があり、現在は判決を待つばかりだ。
 病院側は裁判で「未婚女性の出産は、ひとり親による子育てという問題をもたらす」ことも徐さんの卵子凍結を拒む理由に挙げた。中国では婚外子に対し、社会保障の受給や就学などで制度的な差別がある。徐さんは「未婚女性の出産と子育てに対する偏見が、未婚女性の卵子凍結禁止の背景にある」と指摘する。
 子どもを望む女性は結婚から逃れられないのが実情だが、徐さんは「生活や仕事の状況から、今は結婚も出産もしたくない」。しかし時間がたてば考えが変わる可能性もあり、「卵子凍結によって自分の手に選択権を握れれば、人生を主体的に生きられる」と話す。
 中国では徐さんのような考えをもつ女性は増えつつある。中国英字紙「チャイナ・デーリー」が18年に行ったネット上での調査では「未婚女性が生殖医療技術を使って出産すること」に、回答した3万1千人のうち200人のみが「反対」と答えた。徐さんは裁判費用をネット上で募り、賛同する約100人から計2万7千元(約51万円)が集まった。
 急速な少子化を背景に風向きは変わりつつある。国政助言機関「人民政治協商会議」の金季委員は三月、未婚女性の卵子凍結を認めるべきだとの意見を公表した。徐さんは「いずれ政策が変わると期待しているが、卵子凍結を望む女性にとって時間の持つ意味は大きい。裁判によって少しでも早まれば」と話す。

 卵子凍結 一般的に年齢が上がると卵子の老化によって妊娠しにくくなるため、若いうちに卵子を採取して凍結保存すること。出産時期を遅らせることができるので、子どもを望む女性の人生設計の幅を広げると期待され、日本でも利用が広がりつつある。一方で卵子採取の際に卵巣が傷つくリスクなどがあるとして推奨しない見解もある。中国メディアによると、費用は中国国内で約2万元(約38万円)、国外では渡航費用なども含めて5~10倍程度となるが、米国などで卵子凍結を行う中国人女性も少なくない。

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