<ふくしまの10年・行ける所までとにかく行こう> (12)「入れなくなる前に」

2020年5月6日 02時00分

原発20キロ圏への立ち入り禁止を前に、馬事公苑横にも「立入禁止」の看板が立った=福島県南相馬市原町区で(豊田直巳さん提供)

 政府が二〇一一年四月二十二日から、東京電力福島第一原発二十キロ圏を「警戒区域」とし立ち入り禁止にする-。写真家の豊田直巳さん(63)はその情報を知り、「入れなくなる前に、もう一度取材しておこう」と決めた。
 十八日朝、南相馬市から南下し、二十キロ圏内を目指した。馬事公苑(同市原町区)近くの県道上には、鉄パイプで検問所が設けられて「立入禁止」の看板が立っていた。検問は、応援の警視庁の警察官たち。パトカーのほか機動隊らしきバスも止まっていた。
 日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)の記者証を見せた上で、防護服、ゴーグル、マスクを着用し、線量計も装備して被ばく低減に配慮していることを説明すると、「気を付けてくださいね」と通してくれた。
 この時点では、避難指示は出されたが立ち入りまでは禁じられていなかった。検問所の向こうからは何台もの福島ナンバーの乗用車が出てきたが、ごくありふれたマスクをしていた程度。一般市民も出入りしていた様子という。
 数キロ行くと、道路を乳牛の群れがふさいでいた。道路脇の草をはんでいるウシもいる。車を止めて外に出ると、白い防護服姿の豊田さんを見たウシたちは円陣を組んで威嚇。近くの畑ではブタの群れもいて、食べ物が少ないためか、ウシの群れとにらみ合う姿もあったという。
 警戒区域となれば、家畜への餌やりは事実上できなくなる。やむなく畜産農家が放ったものとみられる。その様子に豊田さんは「飼い主がいないまま生き抜いたウシやブタは、既に野生化が進んでいるように思えた」と話した。
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