<社説>熱海土石流 縦割りの弊害、教訓に

2022年4月2日 06時34分
 静岡県熱海市で発生し、二十七人が死亡、一人が行方不明となっている土石流災害は三月の一斉捜索=から三日で九カ月。被害を甚大化させたとされる盛り土造成を巡り、県の第三者委員会は三月末の中間報告で、県や市は危険性を認識しながら、「縦割り行政」により十分な対応ができていなかったと指摘した。国が今国会で成立を目指す盛り土規制法案の審議にも、教訓を生かしたい。
 なぜ、危険な盛り土が放置されたのか。職員の聴取記録などを検証した中間報告によると、土砂で伊豆山港が濁るなどした二〇〇九年には、既に県と市は危険性を把握していた。翌年には市が造成業者に「土砂崩壊が発生すると住民の生命財産に危険を及ぼす」として土砂搬入停止を指導していた。
 同じころ、今回被害に遭った地区を県が土砂災害警戒区域に指定する手続きが進んでいたが、土砂災害防止法は山腹の崩壊など自然現象を想定し、人工の盛り土は対象外。県や市の担当者間で情報は共有されず、住民に盛り土の危険性は周知されなかったという。
 また、土石流が流れ下った川の砂防堰堤(えんてい)は盛り土造成前に設置され、盛り土の土砂量を織り込んでいなかったが、現場が植林地帯だったため、砂防の担当者は森林法などを所管する別の部署が対応すると考え、堰堤のかさ上げなどにはつながらなかった。総じて、中間報告は「所管する法令等の範囲内での対応を優先し、このような複合的な案件への対応が十分になされなかった」と批判する。
 県も対応への反省から、盛り土の許可や監視を一元的に担う新たな課を設けたほか、盛り土を含む開発行為などの情報を部局横断で共有する対策本部設置や情報システム構築を決めている。
 全国の盛り土の総点検では千八十九カ所で不備が見つかり、その半数近くで必要な災害防止措置が確認できなかった。国の法案は土地の用途を問わず盛り土を一律に規制する内容で、制度面の改善は進みつつある。だが、悲劇を繰り返さないため制度以上に肝心なのは、行政を挙げて住民の命を守るという気概と覚悟であろう。

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