生まれた日本で家族といたい 仮放免の子らの絵、ネットで公開へ

2020年5月4日 12時20分

家族の笑顔が描かれた仮放免者の子どもたちから寄せられた絵=東京都新宿区で

 国外への退去強制命令が出されながら、日本の教育を受けて生活する仮放免の子どもたちが「家族の絆」をテーマに絵を描いている。支援団体に寄せられた作品には「家族と一緒に、日本で暮らし続けたい」という願いが込められている。絵を鑑賞するイベントを5日に開き、その模様を後日、インターネットで公開する予定だ。(安藤恭子)

◆全国に300人 移動に制限、バイトは禁止 

 暖かな色彩の鉛筆で家族の笑顔や輝く瞳を描いた、仮放免中の子どもたちの絵。添えられたメッセージには「せっかく日本で生まれたのに、中学生になれず(母国に)帰るのはいや」「家族全員で残りたい。幸せに過ごしたい」と切実な思いがつづられていた。
 「仮放免者の中にはオーバーステイの親から生まれ、在留資格を持たないまま日本で成長する子どもたちがいる。国籍国はもちろん、外国にも行ったことがない子たちです」と当事者らでつくる「仮放免者の会」の宮廻満事務局長。
 十代以下の仮放免者は昨年六月末で全国に三百人ほどいるが、県をまたぐ移動には国の許可が必要で、アルバイトなどの就労も禁じられている。イベントは、子どもたちの気持ちが伝わりやすい絵を通して現状を知ってもらおうと、こどもの日に合わせて、初めて企画した。

◆普通の人と同じように幸せになりたい

 フィリピン人の両親と暮らす千葉県の小学校高学年の女の子は、笑って手をつなぐ家族の絵に「好きな所に、自由に遊びに行きたい」と願いを込めた。「なんで笑ってるの?」と父親(54)が尋ねると、娘は「だって、いつもさみしいじゃん。私たちも普通の人と同じように幸せになりたい」と答えたという。仮放免者は健康保険に入れないので、父親は家族の病気も心配だ。「新型コロナウイルスも怖い。費用が高くて病院にかかれるかどうか」
 ペルー人の母がいる群馬県の男子高校生は、中学生の妹の絵を手伝った。新型コロナの影響で車の部品工場で働く父親の仕事がなくなったという。「僕も母も仮放免者。こういう時にアルバイトをして家計を助けられなくて、つらい」
 神奈川県のイラン人男性(52)は大学生の息子について「バイクの免許を取ったり、友達と県外に出掛けたり、みんながやっていることができない。仮放免のことも誰にも相談できず、息子が悩み、泣いているのを見てきた」と悲しむ。将来は学校の先生になりたいというが「今のままでは働くのもかなわない。日本に生まれ育った息子に責任はない。ビザをもらい、家族で一緒に生きていけるチャンスが欲しい」と願う。

◆長く日本社会に定着、一家を引き離さぬ配慮を

 日本の仮放免者は、昨年末で二千二百十七人。中には十年を超える長期仮放免の子どもたちも含まれる。宮廻さんは「仮放免というのは就労や社会保障が認められず、生存権が奪われている状態。その上、子どもたちは見知らぬ母国に帰れと言われ、卒業後の未来も描けない残酷な中にいる」と述べる。
 駒井知会弁護士によれば、家族の中で学齢期の子どもだけ、退去強制命令の取り消しが認められるといった裁判所や出入国在留管理庁の判断も相次いでいる。「仮放免者が日本社会に長く定着してきた事実を真正面から受け止め、一家を引き離さないよう配慮して在留資格を与えるべきだ。家族の存在の大切さを描く子どもたちの絵を通じ、市民の皆さんと、ともに生きていく道を探っていきたい」と願う。

◆子どもの日にイベント、後日ネットで動画配信

 五日のイベントでは、直木賞作家の中島京子さんやフォトジャーナリストの安田菜津紀さんらが絵の講評をする。新型コロナ感染拡大を防止するため、後日インターネットを通じた動画配信を計画している。

関連キーワード

PR情報