<新型コロナ>死亡の店主将来悲観か 火災のとんかつ店「店閉じるもう駄目かも」

2020年5月3日 02時00分

火災で店主の男性が死亡したとんかつ店

 東京都練馬区のとんかつ店で四月三十日夜、火災があり、東京五輪の聖火ランナーに選ばれていた店主の男性(54)が全身やけどで死亡した。警視庁によると、現場の状況から体に油をかぶったとみられる。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、店は四月中旬から営業を縮小していた。男性は「店を閉じる。もう駄目かもしれない」と、将来を悲観する言葉を周囲に漏らしていたという。 (奥村圭吾、山田雄之)
 「コロナは長続きしそう。もしかしたら店をやめるかも」。火災の三日前の夜、男性は近くの居酒屋店主の男性(60)を訪ね、廃業する考えを伝えた。二十年以上の付き合いだが、男性が店の経営に関して弱音を吐くのを聞いたのは初めてだった。
 火災当日の夕方、居酒屋店主が区から支給されたアルコール消毒液を渡しにとんかつ店に出向くと、男性が再び「もう店をやめる」と話したという。居酒屋店主は「数日前から鬱々(うつうつ)と思い悩んでいる感じはあった。つらい時だが、できれば頑張ったらと励ましたんですが…」と悔やんだ。

シャッターに張られた臨時休業のお知らせ=2日、東京都練馬区で(一部画像処理)

 警視庁によると、三十日午後十時ごろ、練馬区北町二の鉄筋ビル三階建ての一階部分から出火。一階の壁など一平方メートルを焼き、火の気のない客席付近で倒れていた男性は搬送先の病院で死亡が確認された。遺書は見つかっていない。
 地元ケーブルテレビのインタビュー番組などによると、男性は法政大経済学部の夜間学部に通った後、慶応大経済学部の通信教育学部でも勉強。十一年半かけて卒業した後、店で働きながら日本大大学院で修士課程を修めた。
 二〇〇三年、義父らが約三十年間守ってきたのれんを引き継ぎ、妻と二人で店を切り盛りした。地元の商店街振興組合の役員を務め、買い物客らが打ち水を行う催しなどを企画。先進事例として評価され、地方で講演したこともあった。
 インタビュー番組では、店について「つらい思いをしている人たちの最後の憩いの場。優しくもてなす場所」と話していた。
 住民らによると、男性はマラソンが趣味で、昨年十二月に東京五輪の聖火ランナーに選ばれた。普段は自慢話をしない男性は「走れるぞ」と喜びを語っていた。だが、感染拡大の影響で三月下旬に五輪の延期が決まると、落胆した様子だったという。
 現場の店の前には二日、献花台が設けられ、商店主の仲間や常連客らが手を合わせる姿が見られた。商店主の男性(52)は「自分の明るさで人を元気にする商店街の応援団だった。なぜこんなことになってしまったのか…」とうつむいた。

◆「ホットライン」電話相談始まる

 「総合サポートユニオン」「首都圏学生ユニオン」などの労働組合やNPO法人、弁護士らが共同で主催する緊急の電話相談が二日始まり、新型コロナウイルスの影響で仕事がなくなった生活困窮者、学生、外国人などの電話相談が相次いだ。「新型コロナ労働・生活総合ホットライン」は三日も午後一~八時に受け付ける。フリーダイヤル(0120)333774。無料。

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