<コロナ緊急事態>虐待避難の子 届かぬ恐れ 世帯主申請原則の10万円給付

2020年5月2日 16時00分

母親の虐待を逃れて暮らしている男性は「頼れる大人のいない子どもたちに給付金が届いてほしい」と話す=先月、関東地方で

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済対策で、一律十万円が配られる「特別定額給付金」。一部の自治体では手続きが始まっているが、世帯主が家族分を申請する仕組みのため、児童虐待防止に取り組む関係者からは「虐待から逃れた子どもへの配慮が抜けている」という声が上がっている。 (浅野有紀)
 母子家庭で育った関東地方出身の男性(20)は、幼いころから食事を与えられないネグレクト(育児放棄)家庭で育った。「おなかがすいた」というと、たたかれた。暴力がエスカレートした高校時代のある日、友人宅へ駆け込み、児童相談所に一時保護された。だが、入所できる施設は見つからず、一時同居していた里親家庭からの通学も難しかったため、仕方なく家に戻った。
 高校卒業後、行き先を告げずにアパートを出た。人づてに母親が自分を捜していると聞き、一年間は住民票を移さなかった。
 今回の給付金は世帯主が一括申請すると聞き、ショックを受けた。「頼れる大人がいない子どもたちに、給付金が届いてほしい」。十九歳になって住民票を移した自分は申請できるが、以前の自分と同じ境遇の子どもの姿が浮かぶ。「『住民票移してないんでしょ』と役所から言われたら、逃げ場がない。家から逃げた子どもは、暗闇にいるから『手を差し伸べられません』と言われているみたい」
 日本子どもソーシャルワーク協会(東京)の寺出寿美子理事長は「親から隠れて一人で暮らす子は私が知るだけでも複数人いるから、全国にはもっといる。そういう子ほど現金が必要」と訴える。
 今回の給付金では、配偶者からドメスティックバイオレンス(DV)を受け、住民票を残したまま別居している被害者は、自治体窓口に申告すれば給付金を受け取れる。同様に、児童養護施設に入所している子どもの場合、住民票を移していなくても本人もしくは施設側の代理申請が認められる。それでも関係者に不安は残る。
 日本子ども虐待防止学会理事の西沢哲・山梨県立大教授は、リーマン・ショック時に定額給付金が支給された時、代理申請をした施設に親から苦情が来たり、「子どもを引き取りたい」と要求されることがあったといい、今回も混乱を懸念している。「親の同意なく入所する子どもは増えている。世帯ごとの支給制度は現代の家族のあり様にそぐわない」と指摘する。

関連キーワード

PR情報

社会の最新ニュース

記事一覧