足で感じる千葉の山城遺構 多古町でバスツアーに同行 街おこしへ「保存会」が考案

2022年4月4日 07時11分

山城の急斜面を昇り降りするツアー参加者に、遺構の立地状況や築城の背景などを説明する山城ガールむつみさん(右から2人目)=多古町で

 千葉県内の山城遺構を使った街おこしに取り組んでいる「千葉城郭保存活用会」が山城を巡るバスツアーを考案した。参加者の評判は上々で、主催したJRバス関東(本社東京)はシリーズ商品として続けるという。三月二十日、多古町で行われた一回目のツアーに記者が同行した。(堀場達)
 ツアーの発着点は成田空港。歴史ナビゲーターで同会副代表の「山城ガールむつみ」さんをガイド役に、記者ら二十数人が乗って満席となった中型バスは午前十時に出発した。
 スタート早々、むつみさんが解説を始める。「このバスは平成元(一九八九)年から走り始め、走行距離は百二十万キロ。古い物を有効活用するなどの理由でわざわざ指定しました」。参加者から笑いが起きた。
 二十分ほどで、コンビニエンスストアの駐車場に着き、徒歩で最初の目的地・並木城を目指す。城周辺の集落には寺社や趣深い門構えの屋敷があり、むつみさんは道々、街並みができた背景を説明していく。
 続いて分城(わけじょう)、昼食を挟んで中城、物見台城、土やぐら城と、中世に最盛期を迎えた五つの遺構をこの日は回った。いずれも鎌倉幕府の有力豪族だった千葉氏ゆかりの城。同会代表の小室裕一さん(60)ら県内外の山城ファンで一昨年結成した「多古城郭保存活用会」が、多くの人が散策できるよう、ボランティアで草刈りや枝はらいを進めてきた。
 小室さんは「山城の大半は私有地の里山内にあり、立ち入りや整備は地権者の了解を得なければならない。手入れが行き届かず、やぶになっているところが多いため、むしろ喜ばれる」と話す。観光資源や文化財としての認知度を高め、山城を後世に継承していくことが、小室さんたちの願いだ。
 ツアー客の大半を占める中高年に交じり、熱心にノートを取る少年の姿もあった。東京都江東区から母親と訪れた中学一年生永山勘太さん(13)。「立派な天守がある城より、山城に行くのが好き。当時の人々の生活を想像するのが楽しい」と笑顔を見せた。多古は古来、水運が発展し、米などの集出荷拠点として多くの山城が築かれたとされる。「多古は面白いところと聞き、ぜひ来たかった」と明かす。
 JR関東バス運輸営業部の佐藤幸成部長によると、今回のツアーは募集開始後、一週間ほどで定員が埋まった。「名物料理や有名な観光地がなくても、趣味で人々が集まるところにツアーの可能性を感じた。歩き回って健康的でもあり、山城は自治体の財産になるのでは」。七月には隣の匝瑳市で第二弾のバスツアーを予定している。
 午後五時ごろ、成田空港に戻って解散。帰宅後、靴底に付着していた赤土が玄関に散らばった。「東日本の山城は粘着質の関東ローム層で築かれるため、西日本と比べて石垣が少ない。別名『土の城』とも言われています」。ほうきで掃きながら、むつみさんのガイドを思い出した。

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