<ひと物語>市民連携、行政動かす 「比企の太陽光発電を考える会」代表 小山正人さん

2022年4月4日 07時11分

「地域の生物多様性を守ることがライフワーク」と語る小山正人さん=東松山市で

 小川町に計画されている大規模太陽光発電所「さいたま小川町メガソーラー」の環境影響評価(アセスメント)で昨年十二月以降、知事、環境相、経産相が相次いで計画の「抜本的な見直し」を求める異例に厳しい意見を出した。計画地での希少生物調査などを通じて問題点を指摘し続けてきた「比企の太陽光発電を考える会」代表で獣医師の小山正人さん(52)は、「太陽光発電に対する行政の潮目が明らかに変わった」と言う。
 二〇一四年、所属する埼玉県生態系保護協会から求められ、同協会の東松山・鳩山・滑川支部を発足し、支部長に就任。鳩山町にある「熊井の森」で、地元NPOと協力して生きもの調査をしてきた。「森に入ったとき(サギ科の希少種)ミゾゴイの声を聞き、貴重な生態系が残っているところだと思った」
 一八年、その「熊井の森」の二カ所で森林を伐採して太陽光発電所を造る計画があることを知った。計画は止まったが、「周辺市町村でも計画がたくさんあり、鳩山町だけで運動しても生物多様性は守れない」と一九年十月、「比企の太陽光発電を考える会」を発足。比企地区の住民を中心に百数十人がメーリングリストや交流サイト(SNS)で情報交換する広域連絡会ができた。
 比企地区の計画の中でも、特に大規模な造成が行われ、生態系への影響が心配されたのが小川町のメガソーラー計画だった。現地を歩いたとき「熊井の森と似ている。ミゾゴイがいるのではないか」と直感した。

見つけるのが非常に難しいミゾゴイの営巣を確認したことが環境影響評価(アセスメント)手続きに大きな影響を与えた=小川町で(比企の太陽光発電を考える会提供)

 事業者が最初に提出したアセスメントの準備書にミゾゴイの営巣は触れられていなかった。七人のチームで二〇年六月から、計画地内の沢・支流四十五本をすべて踏査。背丈ほどもある雑草と格闘しながら一年後、ついに計画地のほぼ中央でミゾゴイが営巣していることを確認した。タカ科のサシバ、ホトケドジョウの調査結果とともに、行政の審議会に大きなインパクトを与えた。
 環境相の意見は「ミゾゴイの営巣地およびその周辺の改変を回避するよう事業計画を再検討すること」としている。「『回避』という言葉が使われたのは画期的。営巣地は計画地の中央にあるので、計画は大幅に変更せざるを得なくなった」と小山さんは言う。
 比企、入間郡の五町では四月から、無秩序な太陽光発電所開発に歯止めをかけるための新条例が施行された。「会員が連絡を取り合って町や議員に働きかけたことも影響したと思う。個人個人の活動では、ここまでの流れはできなかった」と振り返った。(中里宏)
<こやま・まさと> 北海道旭川市出身。1994年、北里大学獣医畜産学部(現獣医学部)を卒業後3年間、後志農業共済組合で乳牛の診療に従事。熊谷市の動物病院での研修を経て2001年、獣医師の妻和美さんと東松山市で高坂どうぶつ病院を開業。傷病野生鳥獣保護の県指定を受け、年約100件に上る傷病鳥獣を受け入れている。

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