「いささかも反対に変わりない」全漁連会長 福島第一原発の処理水海洋放出めぐり岸田首相や経産相と面会

2022年4月5日 23時24分
 東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理後も放射性物質トリチウムが主に残る水の海洋放出を巡り、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は5日、首相官邸で岸田文雄首相と面会した。面会後、岸会長は放出について「いささかも反対の立場に変わりない」と首相に伝えたことを明らかにした。

萩生田光一経産相と意見交換する全漁連の岸宏会長(中央)と福島県漁連の野崎哲会長(右)=2022年4月5日、東京都中央区で(代表撮影)

 岸田首相は「処理水については国が全責任を持って対応する」と説明したという。政府が昨年4月に海洋放出の方針を決める前から、全漁連は「断固反対」を繰り返し表明している。

全漁連の岸宏会長(右)に申し入れへの回答書を手渡す萩生田光一経済産業相=2022年4月5日、東京都中央区で(代表撮影)

 この面会前、萩生田光一経済産業相が東京都中央区にある全漁連事務所を訪問。風評被害への対策など全漁連からの申し入れに対する政府回答をまとめた文書を、岸会長に手渡した。
 萩生田氏は、政府が2015年に処理水について「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と福島県漁連に約束した点について、「今後も順守します」と明言した。
 処理水放出による風評被害が起きても漁業が続けられるよう、「超大型の基金を創設するとともに、政府一丸となって必要な対策を講じる」と付け加えた。
 福島第一では、東電が沖合1キロの海に処理水を放出する海底トンネル建設に向けた準備を進めている。萩生田氏との面会後、福島県漁連の野崎哲会長は取材に「海洋放出は就業の場である海に汚染物質が流されること。放出反対という立ち位置を続けていきたい」と話した。(小野沢健太、小川慎一)

福島第一原発の処理水 1~3号機の原子炉に注入した冷却水が事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れ、建屋に流入した地下水や雨水と混ざって発生する汚染水を、多核種除去設備(ALPS)で浄化処理した水。取り除けない放射性物質トリチウムが国の排出基準を上回る濃度で残る。政府は2021年4月、23年春をめどに処理水を海洋放出する方針を決定。東電は、大量の海水でトリチウム濃度を排出基準の40分の1未満に薄めて海へ流す計画を進めている。

  ◇  ◇
 萩生田光一経産相と全漁連の岸宏会長の面会は、冒頭部分のみが報道陣の代表者に公開された。やりとりは以下の通り。

◆萩生田経産相「風評影響に最後まで全責任をもって対策」

萩生田経産相 「昨年4月に、ALPS処理水の基本方針を決定して以降、漁業者の皆さまにはALPS処理水の処分の安全性や風評影響について、心配をおかけしていることについて、お詫びを申し上げたいと思います。また特に沿岸県の漁連の皆様には、反対の中でもたびたび説明、意見交換の機会を頂いていることに改めて感謝を申し上げたいと思います。昨年4月に全漁連から全国の漁業者の不安を払拭するため、政府に対応を求める多くの申し入れを頂きました。本日は政府を代表し、これに対する政府の基本的な考えをお伝えいたします。
 まず政府は処分に伴う風評影響について、最後まで全責任をもって対策を講じて参ります。東京電力に対して、信頼回復に努めるよう指導を徹底してまいります。また福島県漁連に示した漁業者を含む関係者への丁寧な説明等、必要な取り組みを行うこととしており、こうしたプロセスや関係者の理解なしにはいかなる処分も行いません、との回答は今後も遵守します。改めて全国の漁業関係者を含む関係者の皆様に説明を重ね、理解を得て参りたいと思います。さらに、福島や近隣被災県をはじめ、全国の漁業者が将来にわたり安心して漁業を継続できるようにするため、超大型の基金を創設するとともに、政府一丸となって様々な対策を講ずることにより、たとえ今後数十年の長期にわたろうとも、必要な対策を講じてまいりたいと思います。
 今後とも漁業関係者の皆様とは、徹底的に対話を重ね、そこでのご指摘もふまえ、皆様に納得いただけるよう、必要な対策に取り組んでいきます。ALPS処理水の安全性や、基本方針決定の背景等についての理解を深めていただくことや、皆様の要望に応え必要な対策を機動的に講じることを通じて、漁業者の皆様に安心していただくよう、しっかり取り組みを進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」

◆岸会長「将来にわたり安心して漁業が継続できるようにして」

岸全漁連会長 「回答の内容については精査が必要であるが、第1点として本問題に政府が全責任を持って対処するということ。それから二つ目は改めて全国の漁業関係者の理解なしには、いかなる処分も行わないこと、さらには第3点には、全国の漁業者が子々孫々にわたって安心して漁業を続けることが可能となるよう長期的な視野に立った超大型の基金を創設するとともに、必要となるさまざまな対策を講じ続けること。この3点は政府の姿勢が示されたものとして受け止めている。
 しかしながら、われわれJFグループ(全漁連)は国民の皆さま、また全国の漁業者の理解を得られないALPS処理水の海洋放出には絶対に断固反対だとそのことは、いささかも変わることはないわけだ。
 われわれは全国の漁業者が将来にわたって安心して漁業が継続できるようにしてもらいたい。それだけだ。政府におかれては今回の回答を踏まえ、国民の皆さま、また全国の漁業関係者への丁寧かつ真摯な説明を継続されるとともに、実効性も持った具体策を示していただくことを求めたものだ。以上だ」

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