<コロナ 医療を守ろう>「無症状者が感染源、リスク高い」 付属病院で受け入れ 順天堂大・新井一学長

2020年4月30日 02時00分
 新型コロナウイルスの感染者を付属病院で受け入れている順天堂大(本部・東京)の新井一学長(65)=写真=が、本紙の電話取材に応じた。「実感として市中感染が広がっている。無症状の人が感染源となるリスクが高まっている」と指摘した。 (中沢誠)
 新井氏によると、大学の付属病院に救急で搬送されてくる「飛び込み」の患者から、病院のPCR検査で感染が判明するケースが目立ってきたという。
 順大は今月に入り、都内と千葉県内の三つの付属病院で新型コロナの患者を受け入れている。二十七日現在、軽症者から重症者を含めて各病院で二十~三十人が入院。新井氏は「当初の入院患者は保健所からの依頼だけだったが、今では飛び込みの感染者が三分の一を占める」と証言する。
 順天堂医院(文京区)では屋外にプレハブの外来施設を設置。発熱患者などを診察し、感染の有無を検査している。入院患者は専用の病棟に収容し、一般の患者から隔離している。
 感染を避けるため、治療する側も限定した。新型コロナの治療だけを行う専門班を結成。医師と看護師の七十人ほどを二班に分け、一週間交代で治療や診察に当たっている。
 徹底した水際対策により、新井氏は「幸いなことに院内感染は起きていない」と話す。ただ、そのリスクは高まっている。
 慶応大学病院(新宿区)に新型コロナの治療以外で来院した患者のうち、6%の人から陽性反応が出たニュースは新井氏の不安をかき立てた。「一番怖いのは、症状がない人から知らないうちに感染が広がっていくこと。いかに感染を見抜けるかにかかっている」
 順天堂医院では、手術の際は事前に胸部のコンピューター断層撮影(CT)検査を行い、肺炎の有無をチェックしている。今後はすべての手術で事前にPCR検査を行う方針だ。
 現場で働く医師や看護師の疲労も高まっている。
 新型コロナ専門班は、自分たちの家族にも感染させないように、担当の一週間は病院近くのホテルに滞在する。「患者の命だけでなく、自らの感染の恐怖にもさらされている医師や看護師のストレスは相当なもの」と新井氏。精神科の医師による心のケアも始めた。
 行政に求めたいのは、マスクや防護服などの医療物資の支援だ。「今は一カ月分の在庫はあるが、感染者がさらに増えればいつまでもつか…」とこぼす。
 集中治療室(ICU)は新型コロナの重症者用の病床で埋まる。手術は緊急性のあるもの以外はキャンセルし、通常の半分以下に制限している。経営への影響も危惧(きぐ)し、行政には特例としての経済的支援を望む。
 新井氏は最後にこう述べた。「そう簡単に収束しないだろう。長期戦を覚悟している」
 新井氏は二〇〇八~一一年に順天堂医院院長を務め、一六年から現職。全国医学部長病院長会議の前会長。順天堂医院は約千病床を有し、東京都指定二次救急医療機関として、一八年度で約七千四百人の救急患者を受け入れている。

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