埋まらぬ溝、変わらぬ不信感 全漁連会長は何を語ったか 福島第一原発処理水の海洋放出方針決定から1年

2022年4月5日 15時18分
 東京電力福島第一原発の汚染水を浄化処理した後の水の海洋放出処分を巡り、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長らは5日、萩生田光一経済産業相との面会後に報道陣の取材に応じた。岸会長は海洋放出について「断固反対」と強調し、福島県漁連の野崎哲会長も放出反対の姿勢を改めて表明した。(小野沢健太)

福島第一原発の処理水 1~3号機の原子炉に注入した冷却水が事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れ、建屋に流入した地下水や雨水と混ざって発生する汚染水を、多核種除去設備(ALPS)で浄化処理した水。取り除けない放射性物質トリチウムが国の排出基準を上回る濃度で残る。政府は2021年4月、23年春をめどに処理水を海洋放出する方針を決定。東電は、大量の海水でトリチウム濃度を排出基準の40分の1未満に薄めて海へ流す計画を進めている。

政府の海洋放出方針に改めて反対の意思を示した福島県漁連の野崎哲会長(左)と全漁連の岸宏会長(左から3人目)=2022年4月5日、東京都中央区で

◆全漁連会長らと報道陣の主なやりとり

Q)萩生田経産相との協議の内容は。
A)岸会長:大臣からはご案内の通り、一つはこの問題について国が全責任を負って対応すること、二点目は改めて全国の漁業者の理解なしにいかなる処分も行わないこと、三点目は全国の漁業者が子々孫々に渡って安心して漁業が継続できるような長期的な視野に立った超大型の基金を創設すると。この3点が政府として示されたわけです。
 われわれは、この放出には絶対反対であるということはいささかも変わることはありません。こういう中で、全国の漁業者が安心して漁業ができるように漁業が継続できるようにしてもらいたい、これだけが私の一念であります。政府におかれては、今回の回答を踏まえて国民の理解、全国の漁業者への丁寧かつ真摯な説明を続けるとともに、実効性を持った回答の具体的なものを示していただきたいと考えています。
Q)方針決定から1年がたち国民の理解はどうなっていると思うか。
A)これはなかなか評価するのが難しい問題。政府も被災県を中心にかなり説明されていると思いますけど、私の方からどの程度だというのは難しい問題ですので、今日は地元の野崎会長がいらしているので被災県の会長が一番肌に感じていられるのでお答えいただけるとありがたい。
福島県漁連・野崎会長:福島県としては、福島県で漁業を続けたいというのが漁業者として第一義的に考えていることです。それから、福島県で生活していきたいというのが非常に重要です。理解と了解が違うという立ち位置の下、海洋放出は就業の場である海に汚染された物質が流出されるということですので、反対という立ち位置を続けて行きたいと思っています
 本日、さまざまなご提案があり、これを精査しながらですけども、理解と了解は違うと。漁業者は国がやろうとしているこのことについて、何度も何度も説明を受けて内容の理解だけはしていきたい。ただ、なかなか了解できることではないという立ち位置で今後も臨んでいきたいと思っています。
Q)理解という観点で一番問題になっているのは何か。
A)岸会長:やはり安全性ですね。私はここに尽きると思っています
Q)風評被害についてはどう思うか。
A)これは当然、風評被害は起きる。しっかりと払拭できるような対策を今日、大臣にもお願いしました。現実問題として12カ国で輸入が規制されている現状がありますので、その点も含めてしっかり、国として風評被害の払拭に全力を尽くしてもらいたいと各県の会長さんからも強く求めたところです。

◆「超大型基金」は既存の300億円基金とは別

Q)大型基金は既に予算化している300億円の基金とは別物か。
A)当然別です。風評被害対策で今は300億円のものがありますが、これとは全然別に漁業者そのものが将来に渡ってしっかり継続できるための基金だということで、別の基金であるという理解をしています。
Q)具体的な金額は。
A)これから内容を詰めていくということで、金額は示されていません。
Q)方針決定から1年で、会長と総理が会ってからも1年。この1年で政府と漁業関係者の距離はどうなったか。
A)ちょうど1年になるわけですよね。昨年8月と12月に国に対して要請したわけですけど、コロナがあって今日になったというわけで、政府との距離感は、私は反対ですので、同じような距離感です。
Q)政府の対策はまだ不十分か。
A)技術的なことを含めて存じ上げないし、知見もないですけど、我々は反対の立ち位置はいささかも変わることはないわけですから、政府がやってきたことについて申し上げる立場にありません。

全漁連の岸宏会長ら幹部と意見交換する萩生田光一経済産業相(左)=2022年4月5日、東京都中央区で(代表撮影)

Q)今後の国との対話はどうしていくか
A)説明はしっかりしてくださいという立ち位置は変わらないですし、今回の回答を精査しながら政府に確認することもあるだろうし、具体的な施策も出してくださいということも私は考えていますし、特に超大型基金とあるので、中身について国の考えを聞くことも必要だと思っています
Q)東電への信頼度は1年で変化はあったか
A)一切ありません。東電の姿勢は極めて不十分だと思っています
Q)海洋放出への審査が進んでいて、着工になるがどう思うか。
A)いかなる処分も理解なしに行わないと今回も書いてあるので、それを文字通り受け止めています。着工は処分とは別ですけどね。地元に十分説明しているかどうかということだと思います。
野崎会長:我々の反対という行為と、事業が進むことの行為が一緒になっているなということなんでしょうけど、廃炉という過程の中で、一方で致し方ない。我々は操業している立ち位置から反対の立ち位置を取るしかない。それはどうなのかというのは、事業を進める当事者に聞いていただきたい。我々は反対だということです。

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