<ふくしまの10年・行ける所までとにかく行こう> (7)過去まで汚された

2020年4月29日 02時00分

立ち寄ったお墓でも高い放射線量を検出。「大切な過去まで汚された」と悔しさが込み上げた=福島県大熊町で(豊田直巳さん提供)

 「この写真はぜひとも載せてほしい」。この連載用に、写真家の豊田直巳さん(63)と一緒に写真を選ぶうち、指さしたのがこの一枚だった。
 お墓の前で線量計が写っている。こんな所まで取材したのかと驚かされた半面、なぜこの写真にこだわるのかと戸惑った。豊田さんは「ね、お願いだよ」と言った。
 二〇一一年三月二十二日、避難住民が身を寄せる内陸部の田村市総合体育館の取材を終え、再び海を目指す途中、大熊町の国道脇の墓地での一枚だ。近くの温泉地で、原発事故発生二日後の三月十三日に放射線量を測った時は毎時一〇マイクロシーベルトだったのに、再び同じ所で測り直すと二七マイクロシーベルトにまで上がっていたという。
 この間、3号機でも水素爆発が発生。さらに2号機が危機的な状況となり、膨大な放射能をまき散らした。当時、2号機はもうもうと高濃度汚染された水蒸気を吐き出し、事故で放出された放射能の半分は2号機由来とされる。
 「前回の取材で一〇〇〇マイクロシーベルト超の放射線を経験したから、もう値の高さへの驚きはなかった。この一枚にこだわるのは、言葉では表せないくらい悔しさを感じるから。お墓は先祖代々、この地で人々が暮らしてきた大切な証し。福島第一から出た放射能が、人々の大切な過去まで汚してしまった。この地に長期にわたって残ってしまうんだと実感し、シャッターを切った。心がキリキリ痛んだ」
 広い地域に出された避難指示は続々と解除され、JR常磐線も今年三月、全面復旧した。しかし、墓地前の国道は通行できるが停車は不可。墓地は今も帰還困難区域内にあり、許可なく立ち入ることができない。
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