依存症には逆効果? パチンコ店名公表がさらに客を呼ぶ

2020年4月28日 02時00分

パチンコ店で開店を待つ人たち=25日、堺市で

 大阪府が新型コロナウイルス特別措置法に基づき店名を公表したパチンコ店に、その後も多くの客が押し寄せた。モラルがないと批判されているが、そもそもギャンブル依存症だった場合、通常の愛好家とは違い、適切な治療が必要だ。専門家は店名公表は効果がないとして「依存症対策の無策のツケが回った」と指摘する。 (大野孝志)

◆開店前から行列

 大阪府が休業要請に応じない六店の名前と所在地を公表した後、初の日曜日となった二十六日。公表された堺市のパチンコ店には、開店前から多くの客が詰め掛けた。列は駐車場まで続き、府の担当者も「客が入っていることは把握している」と認めた。
 「店名の公表は不名誉なことだから、すべてのパチンコ店が休業要請に応じると思っていた。一部であっても営業を続けるとは…」と、「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は驚きを隠せない。「客が行列をつくる様子を見ると、世の中にはこれだけ多くの依存症の人がいて、救済されていないということが分かる」
 緊急事態宣言の後、都道府県は新型コロナ特措法に基づき、パチンコ店を含む多様な業界に休業を要請した。従わない店には個別に要請し、要請先の店名や所在地を公表できる。名前をさらすことが、事実上の罰則だ。
 大阪府は二十七日にも三店を追加で公表。兵庫県も同日、六店を公表した。東京都も、多数の店が営業しているとして、休業要請に応じない店を二十八日に公表する方針。都総合防災部の東拓也・広域連携担当課長は「一部が開いていれば、客が集中する。感染拡大を防ぐためにも、全店の休業をお願いしたい」と話す。

◆依存症の実態とは

 ただ、開いている店に県境を越えて客が詰め掛ける例は全国に広がっている。これほど新型コロナの危険性が強調され、外出自粛が要請される中、なぜ行ってしまうのか。
 自身も依存症克服を体験した田中氏によれば、ギャンブル依存の人は自分の意志がきかなくなっている。自分にダメ出しをして自暴自棄になっているから、コロナ禍を顧みずパチンコに行く。そして「満員電車の方が危ない」などと言い訳をつくり、自分の気持ちを隠すという。
 生活困窮者の支援を続けるNPO法人「ほっとプラス」の藤田孝典理事も「依存症患者はパチンコに行きたくて行っているわけではない。ギャンブルに心身を支配され、行きたくなるようにさせられている。家族をだましてでも、お金を借りてでも、電車を乗り継いででも行く」と話す。
 「名前を公表すれば、依存症の人を集めるだけ。依存の実態を知っていれば、店名を公表するなんてあり得ない」

◆「国は治療につなげる対策を」

 感染拡大を防ぐため、本当は何が必要なのか。田中氏は「依存を生む産業の責任として、きっちりと営業を自粛するべきだ。パチンコ店は『三密』で、感染リスクが高い。依存症で店に行った人が感染すれば、家族や社会に迷惑をかける。今回は依存症に無策だったツケが回った」と語る。
 長年貧困問題に取り組んできた藤田氏は、国や自治体のギャンブル依存症対策を見直す必要性も説く。
 「本人に『あなたは患者なのだ』と伝える働き掛けが求められる。そうやって治療やケアに結び付ける必要があるのに、今は見過ごされている。依存症対策が不十分な社会が、感染拡大リスクを高めている」

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