増える仮設構造物が事故収束の壁に 3.16地震の影響が長引く福島第一原発

2022年4月6日 12時50分
 東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)は、3月16日深夜の福島県沖を震源とする最大震度6強の地震で、1号機原子炉格納容器内の水位が低下したほか、多数のタンクがずれたり、廃棄物を入れた金属コンテナが転倒したりした。昨年2月13日の地震よりも揺れが大きく、膨大な点検作業に追われた。地震のたびに仮設の構造物が事故収束作業の妨げとなる事態が繰り返されている。(小野沢健太、小川慎一)

地震翌日の東京電力福島第一原発=2022年3月17日、福島県で、本社ヘリ「おおづる」から(沢田将人撮影)

◆原子炉内の水位低下、建屋内の鉄骨落下

 2011年3月にメルトダウン(炉心溶融)が起きた1~3号機を含む原子炉建屋周辺では、地震直後から影響が相次いだ。2号機と5号機の原子炉建屋上部にある使用済み核燃料プールで、水を循環させる冷却が止まった。2号機は復旧までに約8時間かかった。
 1号機は地震直後から原子炉格納容器内の水位が低下し、3月22日には約40センチ下がった。昨年の地震では1、3号機で水位低下し、東電は格納容器の損傷部分が拡大して水漏れが増えた可能性があると判断。今回も、1号機で損傷が広がった可能性がある。
 1号機格納容器内には、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)の状況を調べる遠隔操作ロボットが入ったままだった。水中を移動するロボットを動かすのが難しくなった。炉内の水位は圧力などを基に計算して推測しているが、ロボットで実測した水位よりも15センチほど低いことが分かり、水位のコントロールは難航。注水量の増減を繰り返した。
 4号機では、使用済み核燃料の取り出しのために建屋上部に取り付けたカバー内で、鉄骨の梁(長さ約5.6メートル、重さ約200キロ)が落下した。1、2号機では地震の揺れによって放射性物質を含んだちりなどが舞い上がり、一時的に放射性物質濃度が上昇した。

4号機原子炉建屋のカバー建屋内では鉄骨の梁が落下した=東京電力福島第一原発で(東電提供)

 地震から2日後には、4号機原子炉建屋そばにある使用済み核燃料を保管する共用プール建屋で、天井クレーンの部品に亀裂が見つかり、動かせなくなっていることが分かった。

◆タンク横ずれ、廃棄物入ったコンテナは倒れ

 汚染水を浄化処理した後の水をためるタンクは、160基が横にずれた。タンクは揺れの衝撃を逃がして転倒を防ぐため、基礎部分に固定せず動く設計。ずれたタンクは昨年2月の地震の約3倍に上り、最大約20センチずれた。

使用済み防護服が入ったコンテナが倒れ、中身が出た=東京電力福島第一原発で(東電提供)

 がれきや使用済み防護服を入れた金属コンテナ八基が転倒。一部は中身が外に出て、コンテナがばらばらに壊れた。作業員らはタンク約千基、コンテナ約5万8千基の点検に追われた。
 伐採木の焼却施設は、内部の壁面20カ所で耐火ボードが外れた。完成して3月末に稼働予定だったが、修理に時間がかかり運用開始が見通せない。

◆護岸では地割れは地盤沈下

 政府と東電が23年春にも始めようとしている処理水の海洋放出。そのための関連設備が集まる5、6号機海側の護岸では、地割れや地盤沈下が起きた。

護岸そばの敷地に造っている立て坑そばの地面も割れた=東京電力福島第一原発で(東電提供)

 護岸では、処理水を大量の海水で薄めた水を一時的にためる立て坑の掘削工事が進んでいる。幅7メートル、長さ12メートル、深さ16メートルの穴のすぐ近くの地面が割れてでこぼことなった。
 この立て坑は夏にも着工を予定する海底トンネル(長さ約1キロ)の入り口。東電によると、立て坑自体に影響はなかった。周囲の道路や地面でも複数の地割れや地盤沈下が起き、車両が通行できなくなった。

新たに整備された港湾部では、護岸全体が沈んだ=東京電力福島第一原発で(東電提供)

◆21年2月よりも揺れが大きく

 昨年2月と今年3月の福島県沖を震源とした地震の規模は同程度で、原発が立地する大熊町、双葉町の震度は6弱と同じだった。しかし原発構内で観測された揺れは、全体的に3月の方が上回った。
 東電は地震計を5、6号機原子炉建屋内など9地点に設置。代表観測点の6号機地下2階では、揺れの強さを示す最大加速度は3月の地震で横揺れ(水平)が221ガル、縦揺れ(垂直)は202ガル。昨年2月は横揺れ235ガル、縦揺れ117ガルと、今回は縦揺れが大きかった。
 事故時に水素爆発で大破した1、3、4号機の耐震性の劣化具合を調べるため、昨年2月の地震後に3号機原子炉建屋に地震計が設置された。今回、1階の観測最大値は横揺れ279ガル、縦揺れ173ガル。東電は「5、6号機と比べて大きく変わらない」としている。3月29日には、2号機にも地震計を置いた。

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