学校もショッピングモールもがれきに…ウクライナのハリコフ 市民団体が動画撮影し戦争犯罪の証拠集め【動画】

2022年4月7日 06時00分
 【ワシントン=吉田通夫】ロシアによる戦争犯罪の疑惑が問題になるなか、ミサイル攻撃にさらされるウクライナ第2の都市ハリコフで、社会問題の解決に取り組む市民団体代表のナタリア・ズバルさん(57)が、戦争犯罪の証拠を残そうと動画を撮り続けている。破壊された学校など一部は公開しており、ウクライナの検察当局とも協力。国際刑事裁判所(ICC)などで、ロシアの戦争犯罪が裁かれる日を待ち望んでいる。

3月27日、ウクライナ東部ハリコフのハリコフ大学で、破壊された車両の前で自ら写真を撮るナタリア・ズバルさん=本人提供

 「ちょっと待って。空襲警報が鳴っているから地下ごうに移る」。スマートフォンでのオンラインインタビューが始まるや、慌てて地下に身を潜めたナタリアさん。「ロシア軍は夜も砲撃や爆撃をするから、壕じゃないと眠れない」と笑い飛ばす。スマホ越しに、遠くから「ドン」と鈍い爆発音が3回聞こえた。
 ロシアは2014年に南部クリミア半島にも侵攻しており「今回も攻撃するつもりだろうと思っていたから、食料や水を確保して備えていた」。そして、2月24日早朝に爆撃音で目覚めて以来、ミサイル攻撃が続く。「私は怖くないけれど、爆撃音は街全体に響くから、大きな音がするとみんな不安になる」と言う。街中のスーパーでは買い物もできるが、物資は滞りがちだ。
 そして、3月8日。自宅から200メートルほどのショッピングモールが爆撃された。「1年前にできたばかりで、映画やボウリング場、子供向けの遊戯施設、カフェもあってお気に入りだった」と言う。ジュネーブ条約などの戦時国際法は、民間人への攻撃や生活に不可欠なインフラへの攻撃を明確に禁止している。ロシア軍の行動は戦争犯罪に当たると批判されているが、ロシアは常に攻撃を否定する。だから記録しなければいけないと思った。「もしかしたら、何かが変わるかもしれない」と。
 以来、弁護士やジャーナリストらとともに、爆撃された学校や住宅地、ガスパイプラインなどを撮影し、ロシア軍のミサイルによる被害を証明するため破片を集め、目撃者と話し続ける。ごく一部のみ動画投稿サイト「ユーチューブ」でも公開。ロシアの戦争犯罪を捜査するウクライナの検察当局から協力を求められ、情報も提供している。
 難しいのは承知のうえだが、いずれICCなどで自身の証拠が採用され「ナチスの戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判のように、ロシアが裁かれる日が来る」と語った。

オンラインで自宅の地下壕から取材に答えるナタリア・ズバルさん

 もちろん市民が犠牲になった現場も訪れるが、直接遺体を見ていないのは不幸中の幸いかもしれない。首都キーウ周辺では、今月3日以降、ロシア軍が市民を大量虐殺した疑惑が判明。もちろん「胸が張り裂けそう」だが、「ロシアは(第2次)チェチェン紛争やシリアへの軍事介入などでも無差別攻撃を繰り返してきたから、驚きはなかった」と言う。
 「ロシアという国に言いたいことなどない。ただ消滅すればいい」と吐き捨てた。そして、世界には―。「ロシアを恐れず、自由のために立ち上がってほしい。彼らはミサイルで攻撃するし、市民を虐げるけど、地上ではウクライナ軍に負ける弱い連中なのだ」
 ハリコフから逃げようと思ったことはない。「自分なりの方法で街を守る」と、夫と義母とともに街に残り続ける。

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