<コロナ 医療を守ろう>中核病院 綱渡り 墨東病院、救命救急を一部停止

2020年4月26日 02時00分

都立墨東病院の出入り口には、診療体制の縮小を説明する表示が出ている

 新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる東京都立墨東病院(墨田区)で、医師や看護師、患者の新型コロナ感染が相次ぎ、救命救急機能を一部停止するなどの事態に陥っている。同病院は全国に四十二カ所ある高度救命救急センターの一つで、地域医療の中核を担ってきた病院だけに、長引けば他病院への負担が増すことが懸念されている。 (松尾博史、藤川大樹)
 墨東病院は「院内感染の可能性が高い」と調査している。新規の入院や外来患者の受け入れ中止に加え、救命救急センターの受け入れ停止を決めた。年間約六千三百件の救急搬送は他病院が肩代わりする。
 感染は最初に一般病棟の患者二人で判明。同じ病棟の看護師らを検査すると次々に感染が分かり、二十四日までに医師八人を含めた四十一人に広がった。
 墨東病院は感染症指定医療機関でもあり、一月に中国・武漢市からのチャーター便帰国邦人も受け入れた。現在は重症の新型コロナ患者の治療に当たる。今のところ感染症病床での院内感染はなく、新型コロナ対応は続けるが「地域の基幹病院。特に救急にも影響を及ぼしている。なるべく早く診療体制を戻す必要がある」と都幹部は心配する。
 同病院では、新型コロナの対応に追われるスタッフの疲弊や、医療物資の不足が深刻化。高性能マスク「N95」や医療用ガウンなどの供給は不安定になっており、事務担当者は「すぐなくなることはないが、供給量を計算し、節約して使っている」と説明する。関係者によれば、マスクやガウンは滅菌処理して使い回している。
 さらに院内での感染者発生で、医師や看護師らの負担が増加。濃厚接触者は自宅待機となり、残ったスタッフの中には保育園から子どもの登園を拒否され、出勤できない看護師が複数いる。「委託業者の一部に離職者が出ている、との報告がある」と事務担当者。病院側は委託業者の業務内容を明らかにしていないが、関係者は「感染や風評被害を恐れ、複数の非常勤事務スタッフが辞めている」と明かす。
 院内感染は全国各所で発生。政府は二十四日、医療用ガウンなど防護具を、物資が不足する医療機関に配布する方針を表明。ただ抜本的な対策となるかは不透明だ。
 新型コロナは無症状の人からもうつるとされ、一般の来院患者から感染が広がる恐れがある。世界保健機関(WHO)で新型インフルエンザ対策に携わった村中璃子(りこ)医師は「診療科を問わず、どこかに新型コロナの患者がいるという前提で診察や看護に当たるしかない」と強調。「受診者や付き添いには無症状でもマスクを着けてもらう。手術や入院前の患者にはPCR検査をして感染の有無を確認するなどの必要がある」と指摘する。

病院の外観=いずれも24日、東京都墨田区で

<東京都立墨東病院> 病床数は765。内科、循環器科、神経科、外科、心臓血管外科、麻酔科など28の診療科がある。三次救急や周産期医療、小児救急を担う。医師や看護師、事務など非常勤を含めて約1700人が勤務。
<各地の院内感染などの事例> 新型コロナウイルス感染症の院内感染が疑われる事例は全国的に発生。永寿総合病院(台東区)では4月中旬までに患者や看護師ら計約200人の感染を確認。永寿総合病院から患者を受け入れた慶応義塾大学病院(新宿区)でも入院患者や医師らに感染が広がった。国立病院機構大分医療センター(大分市)や同機構北海道がんセンター(札幌市)など地域の拠点病院でも相次いでいる。

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