コロナと戦う!私たちの免疫システム 複数の段階へてウイルスを攻撃

2020年4月25日 02時00分
 新型コロナウイルス感染症には、特効薬がなく、治すには私たちの体が持つ免疫システムに頑張ってもらうしかない。ウイルスが体内に入ってくると、複数の免疫細胞が協力して退治しようと動きだすが、免疫が暴走して肺炎を悪化させてしまうこともあるようだ。 (森耕一)

◆先鋒は自然免疫

 「免疫を鍛えよう」「免疫がつく」―。免疫はすっかりキーワードになった。免疫細胞は体に侵入したウイルスや細菌を見つけて攻撃する。大ざっぱでもすぐ働く免疫細胞もあれば、時間をかけて準備をする緻密な細胞もいて、攻撃は段階的に進んでいく。
 第一陣は、体にもともと備わっていて病原体の種類に関係なく攻撃する「自然免疫」システム。のどや肺など気道の表面細胞から体内に入った新型コロナウイルスは、細胞内で「倍々ゲーム」で増殖を始める。すると免疫細胞のうち、食細胞と呼ばれるいくつかの白血球が働きだす。白血球にはウイルスなど異物を感知するセンサーがあり、ウイルスに侵された細胞を次々に食べて体内をきれいにする。
 こうした免疫の動きが活発になると、体は通常と違う「戦闘態勢」になり、発熱や頭痛が起こる。大阪大の宮坂昌之招聘(しょうへい)教授(免疫学)によると「インフルエンザの場合、免疫反応によって感染から二~三日でひどい熱が出るが、コロナウイルスは増殖速度がかなり遅いようだ」と指摘。このため、感染初期にウイルスが増殖しても強い免疫反応が起きず、熱があまり出ないまま一週間程度が過ぎる可能性があるという。

◆その間に抗体を準備

 自然免疫が初期の戦いをしている間に、体はより高度な態勢を整える。
 リンパ球と呼ばれる細胞は、外敵の特徴を学習し、その外敵にぴったりくっついて殺してしまう「抗体」というオーダーメードのタンパク質を作る。新型コロナ専用の「抗体」を大量に作るようになると、効率的にウイルスを退治でき、回復する人が多い。
 このリンパ球は一定期間、外敵を記憶する力があり、二回目に同じウイルスが来ると、すぐに大量の抗体を作るので症状が重くならない。これが「免疫ができる」ということだ。この状態を人工的に作るのがワクチン接種だ。
 また、抗体自体も感染後しばらくは体内に残る。この抗体が血液中にあるか調べ、どのくらいの人が既に新型ウイルスに感染したかを探る研究も米国などで始まった。
 ただ、宮坂さんは「かつては免疫といえば抗体が中心だったが、自然免疫も重要だと分かってきた」と話す。今回のコロナウイルスの場合は「健康な人では自然免疫だけで感染を抑えられ、抗体がほとんどなくても症状が出ない人が少なくない」とみる。

◆暴走すると肺炎悪化…

 一方、免疫の働きが強すぎても問題だ。感染後十日~二週間で重篤になると、免疫に攻撃指令を出す伝達物質「サイトカイン」が増えすぎて免疫が暴走し、特に肺などでひどい炎症をおこし、正常な組織まで傷つけてしまうと報告されている。するとウイルス以外に細菌などにも感染しやすくなる。免疫学者の本庶佑さんは、サイトカインを抑えるリウマチ治療薬「アクテムラ」の活用を提言している。

◆BCGワクチン接種国では死者少ない?

 新型コロナウイルス感染症の患者や死者は、結核を予防するBCGワクチンを接種している国で少ないと、世界の複数の研究チームが報告している。藤田医科大(愛知県豊明市)の宮川剛教授は「統計的には、集団接種をしている国とそうでない国で、明らかな差がある」と話している。
 宮川さんらのチームは、約二百カ国を
(1)日本、韓国などBCGワクチン接種を続けている国
(2)英国、ドイツなど既に結核は流行していないとして接種をやめた国
(3)アメリカ、イタリアなど元々接種していない国
―に分類。それぞれのグループの新型ウイルスの感染率と死亡率を比較した。
 その結果、平均寿命や喫煙率、国外との移動の多さなど、感染率に影響を与えるさまざまな要因の影響を取り除いても、日本など接種継続中のグループの感染率の平均値は、他のグループを大きく下回った。

◆医学的には未解明

 ただし、医学的にBCG接種と新型ウイルス感染の関係は未解明で、日本ワクチン学会は「否定も肯定も、(接種の)推奨もされない」と強調する。宮川教授は「日本ではほとんどの人が子どもの時に接種を受けており、今から打つ必要はない」と指摘する。
 BCGは生きた結核菌の毒性を下げて注射する。大阪大の宮坂さんは「結核菌の表面には、自然免疫が外敵を感知する能力を強化する物質がたくさんある。新型ウイルスに対する自然免疫が強化され、それが長期間続いているのかもしれない」と推測する。

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